アップルソング

雲が早い速度で ページ20

「大津。風呂、見て来い」
「見て来ますけど、俺が先に入ります」
「アホか」
「俺が用意してるんですよ？俺が先です」
「日本のエースは、俺やで」
「どうかな。今日、俺の方がシュート決まってましたけど」
「たまたまに決まってるやろ」
「明日も、俺が勝ちます」
「お前には絶対に負けん。エースの座も、Aも」
「Aの事なら、とっくに俺の勝ちでしょ 笑」
「なんや、その根拠の無い自信」
「根拠はありますよ。だって今日、抱き合いましたもん」
「どうせ、お前が無理矢理ハグしたんやろ」
「Aも、まんざらじゃなかったと思いますけど 笑」
「そんな訳ないやろ。俺なんか、一緒に風呂入った事あるんやで」
「いつの話ですか 笑。幼稚園とか、小さかった頃の事でしょ？」
「……関係ないやろ、そんなの」




まだ言い合っている真司と祐樹を「うるさいから、あっち行け」と押しのけ、パソコンの前に篤人が座った。





「A、お父さんとお母さんは？」
『リビングにいるよ。呼んで来ようか』


後ろでまだ言い合いを続ける真司達を見て、「真司達がうるせーから、また今度にしておく」と篤人が笑う。






”お父さん、お母さん”



今までとは重みの違う響き。
それが、なんだか嬉しかった。








「おはよう、A」


実家の布団はやはり心地よく、起きたのは朝の10時だった。
それでも、いつも当たり前の様に隣にある温もりが無いのは寂しくて。
起きてすぐに隣を見た自分が、なんだか可笑しかった。



『おはよう、お母さん』
「朝ご飯食べるでしょ」
『ありがとう。自分でやるからいいよ』
「いいから、顔を洗って来なさい」
『うん 笑』



忙しそうに動くお母さんは、何だか楽しそうで。
その姿を見て、実家にいる時間は思いっきり甘えようと決めた。







毎日、合宿先からスカイプが来た。
といっても、それは真司か祐樹からばかりで。



「A。おっちゃんとおばちゃん呼んで来て。俺がどれだけAの両親と仲いいか、大津に見せたる」
「A。俺も久しぶりに話したい」
「大津は関係無いやろ」
「いーえ、あります。もしかしたら、俺がAのご両親をお父さんお母さんって呼ぶ日が来るかもしれませんから」
「無いわ。麻也がAと結婚するくらい無いわ」
「って事は、真司君よりは可能性があるという事だ」




いつもの様に言い合う真司達を見て笑う麻也。
それを無視し続ける篤人。




相変わらずのこの4人の絆に、毎日たくさん笑った。

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