アップルソング

ご機嫌いかが？ ページ12

カチャリと寝室が開く音で目が覚めた。
モゾモゾとベッドに入ってきた、いつも隣にいてくれる温もり。



『…篤人、お帰り』
「わり。起こしちゃった？」
『大丈夫。今、何時？』
「2時」
『まだまだ眠れるね。おやすみ、篤人』
「…眠い？」
『眠い』
「…俺、まだ目が冴えてるんだけど」
『私は、眠い』
「まだ、眠れそうにないんだけど。どうしたらいいと思う？」
『…目を瞑ってればいいと思う』
「それ、本気？」
『本気 笑』
「…ふーん」
『おやすみ、篤人』
「…あ。大事な事忘れてた」
『なに？』
「……大津に何もされてないか、確かめないとね」
『ダメ。眠い』
「いつも言ってんじゃん。Aに拒否権無いって」


ニヤリと笑った篤人に、唇を奪われる。



どんどん熱くなるキス。
篤人の手によって奪われた下着が、パサリとベッドの下に落とされた。





二人の荒くなる呼吸。

何度も重なる唇。

お互いの素肌。

熱い吐息。

チクンと体に走る、心地いい痛み。

篤人の逞しい、胸。

体を這う、篤人の指と唇。

体に唇を寄せると耳に届く、篤人の吐息。





「…もう、入れたい」


ピリリと破かれる、プラスチックのパッケージ。





ゆっくりと私の体に侵入してくる、篤人の熱い体。

眉間に皺を寄せながら、私を捉える瞳。

私を見つめながら、揺れる体。

何度も送られる、熱い口づけ。

どんどん強くなる、篤人の律動。

部屋に微かに響く、二人の声。






愛してる






私の手を強く握った篤人が、私にゆっくりと溶けた。








翌日のドイツは、また晴れていた。

空港で携帯を機内モードにする前に送ったメール。



”大丈夫。信じてる。頑張ってね、祐樹”


返事はすぐにきた。

”大丈夫。信じてて。俺は必ず、チームを勝利に導く”







約15時間後。
私達は、日本に着いた。



「報道陣が待ってるだろうから、先に行くけど。とりあえず、何も発表はしないから」
『うん』
「そのまま取材あるから、別行動ね」
『わかった』
「夜飯どうする？どこか食いに行く？」
『明日香と美咲と約束してる 笑』
「都内？」
『そう』
「あまりハメを外さない様にね。じゃ、ホテルで」
『うん 笑』


一瞬だけ、篤人が私の左手をギュっと握った。
左手に存在する指輪を、満足そうに見つめる篤人。

そんな小さな事で、また私は幸せになれる。






携帯の機内モードを解除すると、一番に届いたメール。



”Aはやっぱり勝利の女神だ。あと一試合。絶対に昇格する”

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