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雲が早い速度で何処かへ流れていく ページ30

金木犀の香りが漂い、木々が赤く色づく季節になっていた。


篤人はオフの前の日は必ず私の家に泊まりに来る。

たまにホームゲームに招待してくれて、チームメイト達とご飯を食べに連れて行ってくれる。

語学スクールにもちゃんと通い、カフェと居酒屋のアルバイトも上手くいっている。

毎日が充実していた。


『いらっしゃいませ。また来た 笑』
「また来たって何だ。客だぞ 笑」
裕平さんが笑いながら靴を下駄箱に入れる。

「ひさしぶり、Aちゃん」
『お久しぶりです、遼さん』
裕平さんが私のバイト先の居酒屋に頻繁に来るようになり、裕平さんのお友達とも話す様になっていた。

『今日はお二人なんですね』
「うん。とりあえずビールちょうだい」
『かしこまりました』

厨房でビールの用意をしていると、バイト仲間の女の子が近づいて来た。

「また来てるね、裕平さん」
『うん。バイトでも会うから毎日顔を見てる 笑』
「裕平さんってカッコいいよね。…それ私運んでもいい?」
『いいよ。任せた 笑』
「ありがと」
持っていたビールをその子に渡し、喜んで運ぶ後ろ姿に少し笑ってしまう。

仲のいいバイトの子達に彼氏がいる事は伝えていたが、それが誰かとは誰にも話さなかった。


しばらくしてコールが鳴り、番号を見ると裕平さんの部屋だった。
さっきの子の姿が見当たらなく、裕平さん達の元に向かう。

『お呼びですか?』
ふすまを開けると、裕平さん達の他に綺麗な女の人が2人いた。

「ビール4個ちょうだい」
遼さんが少し赤い顔で注文する。

『かしこまりました。ここ4人って狭いですよね?さっき部屋空いたんで移動します?』
「Aちゃん、ありがとう!」
少し陽気になった遼さんとは対照的に、裕平さんは少しつまらなそうだ。

4人を部屋に案内し、先程まで裕平さん達がいた部屋の食べ物をお盆に乗せて移動しようとした時、裕平さんが来た。

「A、手伝う」
『大丈夫ですよ。裕平さんはお客さんなんだから気にしないで下さい 笑』
「いや、いいよ。あまりあそこにいたくないから」
『どうしたんですか?裕平さんらしくない 笑』

笑いながら顔をあげると、裕平さんが真剣な顔で私を見つめていた。

『どうしたんですか?』
「…いや、別に」
『裕平さん変なの 笑』
「…Aの顔に何かついてる」
裕平さんの手が私の頬に触れた。

『さっきつまみ食いしたからかも 笑』
「…いや、気のせいだった」

そう言って裕平さんが部屋へと戻って行った。

風に日を灯して びろうどの窓燃やす→←夜がやってきて僕にささやくんだ ねえキスしなよって



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momotan(プロフ) - おはようございます。最初から一気にここまで読んだのですが、二人が別れた時、苦しすぎてちょっとプチパニックになりました。落ち着かせる為にわざと我慢せず泣いて頭冷やすためにカキ氷食べました 笑 続き楽しみです 幸せならいいなあ ( ; ; ) (2014年7月21日 6時) (レス) id: 713fce9fe2 (このIDを非表示/違反報告)
香代(プロフ) - 朝から一気に読ました!そしてまた、大号泣です(TT)切ない…切な過ぎます(T_T)rockinさん最高です! (2014年6月17日 14時) (レス) id: 53631b236d (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 小説で初めて泣きました。続編はまだ読んでないですが、またくっつかないかなぁ、と熱望してしまいます。笑 (2014年5月4日 21時) (レス) id: 54946c3b64 (このIDを非表示/違反報告)
コンタック(プロフ) - 分かっていたのに大号泣…あたらしいうたに進む前に素晴らしい日々をかラブセレナーデ で精神安定を図らねばとも思いましたが、どっちも結局 涙無しで読めないですし。迷い所です(._.) (2014年4月21日 20時) (レス) id: fe922a9518 (このIDを非表示/違反報告)
ライチ(プロフ) - 切なすぎです。もう切なくて苦しくて泣いちゃいました。 (2014年2月11日 9時) (レス) id: 5e8b0ee40a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rockin | 作成日時:2012年10月24日 10時

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