瞳を閉じればそこには風が何もなかった様に通り過ぎて行くんだ ページ24
カチャリ と冷たい音をたてて玄関が開く。
先に篤人が部屋に入り、いつものようにソファーに座る。
その様子をただ立ちすくんで眺めていた。
「A、座んないの？」
『…今お茶入れるね』
「うん」
篤人がいつもの様にテレビをつける。
私の気持ちとは反対に、テレビから流れる賑やかなバラエティ番組の笑い声。
後ろ向きになっていた気持ちが、少しだけ和らいだ気がした。
篤人に紅茶を出し、篤人の隣に座る。
篤人は、多分別れようなんて言わないだろう。
そんな変な自信だけはあった。
じゃぁ、あの記事の真相は？魔が差したの？
私以外の女の子の吐息や肌を篤人は知ってしまったの？
またあの写真が頭の中でグルグル廻り、目の前が涙で霞んだ。
「A？」
篤人が優しく私の顔を覗き込む。
『…なんで東京にいるの？練習は？』
やっとの思いで発した声は、小さくかすれていた。
「練習終わって車飛ばして来た。A携帯の電源切ってるし」
『…忘れてた。何時に来てたの？』
「2時間前くらいかな」
『ゴメンね』
「明日の朝早く帰る」
『…わかった』
「これ見たんでしょ？」
篤人がカバンからあの雑誌を取り出す。
『…うん』
「やっぱりな」
『……』
何も言わずうつむいている私の頭を、篤人が笑いながら撫でる。
「これ嘘だから」
『…嘘？』
「うん。先輩に飯誘われて、行ったらそこにモデルがいたのは事実。そいつら飲み過ぎて、先輩と送った途中写真撮られた」
『…わざわざホテル街を歩いたの？』
「あの先にコンビニがあんの。先輩も後ろにいたし。上手い事その辺は写されてないけど」
『…腰に手を回して送ったの？』
「回してないから 笑。モデルがふらついて支えた瞬間の写真。カメラマンって凄いな。多分1秒2秒の出来事をこうやって撮るんだから」
『……』
「まだ誤解してる？」
『……』
「A、こっち向いて」
篤人が私の頬を両手で挟み、自分の方を向かせる。
「…言っただろ？A以外興味ないって。俺の事信じて」
篤人が真剣な顔で私を見つめる。
その途端、我慢していた涙がポロポロと頬を伝う。
「心配かけてごめん。例え周りにどんな誤解されたとしても、Aには真実を知って欲しいから」
『……』
「俺が好きなのは、一人だから」
篤人が涙を流す私の目にキスをする。
『…他の女の子に触れてない？』
「当たり前 笑」
『本当に？』
「俺の事一番わかってるの、Aでしょ？」
優しく笑った篤人が優しく私の唇にキスを落とす。
大切なものを失くさないように いくつかの場面を忘れないように→←僕はといえば 道端に放り出されたまま
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momotan(プロフ) - おはようございます。最初から一気にここまで読んだのですが、二人が別れた時、苦しすぎてちょっとプチパニックになりました。落ち着かせる為にわざと我慢せず泣いて頭冷やすためにカキ氷食べました 笑 続き楽しみです 幸せならいいなあ （ ; ; ） (2014年7月21日 6時) (
レス) id: 713fce9fe2 (このIDを非表示/違反報告)
香代(プロフ) - 朝から一気に読ました！そしてまた、大号泣です(TT)切ない…切な過ぎます(T_T)rockinさん最高です！ (2014年6月17日 14時) (レス) id: 53631b236d (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 小説で初めて泣きました。続編はまだ読んでないですが、またくっつかないかなぁ、と熱望してしまいます。笑 (2014年5月4日 21時) (レス) id: 54946c3b64 (このIDを非表示/違反報告)
コンタック(プロフ) - 分かっていたのに大号泣…あたらしいうたに進む前に素晴らしい日々をかラブセレナーデ で精神安定を図らねばとも思いましたが、どっちも結局 涙無しで読めないですし。迷い所です(._.) (2014年4月21日 20時) (レス) id: fe922a9518 (このIDを非表示/違反報告)
ライチ(プロフ) - 切なすぎです。もう切なくて苦しくて泣いちゃいました。 (2014年2月11日 9時) (レス) id: 5e8b0ee40a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rockin
| 作成日時：2012年10月24日 10時
