青春狂走曲4

夕方の憂鬱にやられても 夜には輝き出そう ページ2

冬休みが始まった。


篤人は鹿島へ 麻也は名古屋へ 真司と安田君はそれぞれ大阪へ 槙野君は広島へ

Jリーグから声の掛かっているメンバーは、チームの練習に参加していた。

篤人とはもちろん会えなかったが、ポツリポツリとメールは送り合っていた。


(練習すげー辛い)

(お疲れさま。少しは慣れた？)

(いい人ばかりだから大丈夫。プロってスゲーな)

(体に気をつけてね)

(帰ったらすぐに行くから)

(うん。待ってるね)


冬休み中でも学校は開放されているので、時間を見つけては図書室に通っていた。

サッカー部の練習が目に入った。

でもそこにもうみんなはいない。

寂しい気持ちを抱え、廊下を歩く。


「A先輩」

振り返ると、笑顔で大津君が立っていた。

『久しぶりだね、大津君』
「はい。…A先輩、痩せました？」
『そうかな？勉強ばっかりしてるから 笑』
「それ以上痩せたらダメですよ 笑。前に抱えた時、軽すぎてビックリしましたから 笑」
『あはは。大津君、練習は？』
「今日はもう終わりです。A先輩はまだ勉強？」
『うん。でももう集中力が途切れて、ジュース買いに来た所 笑』
「そうなんだ。俺、ジュースおごりますよ」
『何で？いいよ、悪いから』
「頑張れっていう意味も含めて 笑」
『ありがとう 笑。じゃぁおごってもらおうかな』
「はい！」

ジュース片手に、多目的ホールに座る。

「A先輩はやっぱり苺牛乳だ 笑」
『少し前に、大津君に飲まれちゃったからね 笑』
「あの時の苺牛乳、超美味しかった 笑」

窓から入り込む光が、二人を照らす。

「俺、キャプテンになりました」
『本当？おめでとう』
「麻也君みたいに、みんなをまとめられるか心配ですけど 笑」
『大津君なら、きっと大丈夫だよ』
「ありがとうございます」

大津君が優しい顔で笑う。


「内田先輩は鹿島で練習参加ですか？」
『うん。なんだか大変みたい 笑。麻也も真司もそれぞれのチームに行ってる』
「A先輩、寂しいんだ 笑」
『そうだね 笑』
「プロサッカー選手か。スゲェな 笑」
『大津君もプロになって、ドイツに来るんでしょ？笑』
「もちろん！俺、絶対A先輩のいる国に行きますから」
『待ってる 笑』
「…絶対、待ってて下さいね」

大津君が立ち上がり、私の頭に手を乗せる。

「この学校でA先輩に会えるのも、もう少しか」

寂しそうに大津君が笑った。

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