ラブセレナーデ7

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「いらっしゃい、ウッチー」


俺を出迎えたのは可愛い恋人ではなく、笑顔の顔長男。






…なんでお前が、当たり前の様にこの家にいるんだ



油断している顔長男の脛に一発蹴りを入れ「おじゃまします」と、何事も無かった様にリビングに入らせてもらった。







「あ、あ、篤人君。す、寿司食べませんか？」

ソファーに座っていたお父さんが、俺と目が合った瞬間に立ち上がる。





「こんにちは。お父さん」
「あ、こ、こっこんにちは」
「寿司…ですか？」
「ほ、ほ、ほら」



お父さんの目線の先に並ぶのは、たくさんの寿司。

時計は、12時。
披露宴は、14時。


ま、食えるけど






「頂いていいんですか？」
「お、お茶淹れますね」


ドタドタとキッチンに消えて行くお父さん。
バタバタとお父さんが持って来てくれたのは、どう見ても濃すぎるお茶だった。




「おじさん。濃すぎ 笑」
「そんな事ないだろう、麻也」
「おじさんはいいから、座ってな」


キッチンから聞こえて来たのは、「お茶っ葉入れ過ぎでしょ、コレ 笑」という麻也の笑い声。




麻也がこの家にいるのは、きっと自然な事で。
手慣れた様にお茶を淹れ直す麻也をチラリと見て、なんだか少しだけ悔しくなった。





「ウッチー、お茶入ったよ」
「…サンキュ」
「ウッチー、14時から披露宴だからね。その辺の事考えて食った方がいいよ 笑」
「いや、腹減ってるし。頂いていいですか？お父さん」


ソファーに座るお父さんを見れば、お父さんがその場でまたピシっと立ち上がる。

そんなお父さんの姿に笑いそうになるのを堪えながら「いただきます」と、お寿司に箸を伸ばした。







「あ、篤人君は、ま、ま、マグロが好きなのかい？」

たまたまマグロを口に入れた時に、お父さんが話しかけて来た。



「まぁ」
「じゃぁ、こ、これもどうぞ」


目の前に並べられる、マグロの寿司の数々。
赤身、ネギトロ、中トロ、鉄火巻き、漬けマグロ。

どんどん並べられるマグロに呆気に取られていると「おじさん。そんなマグロばっかり食えないでしょ 笑」と、麻也が笑う。



Aのお父さんと仲のいい麻也にジェラシーを感じながら、並べられたマグロの寿司を食べ続けた。






「あ、帰ってきた」


玄関に向かう麻也。
微かに玄関から聞こえてくるAの声に、顔がニヤけそうになる。




青い着物を着たAと目が合った時にニヤけなくて済んだのは、口いっぱいにマグロの寿司を頬張っていたからだと思う。

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