ラブセレナーデ7

9 ページ9

「篤人君が来るのは、明日だっけ？」


ソファーに座るお父さんが、何故かソワソワしている。






『うん』
「母さん、明日の昼は寿司でも出前取るか。せっかく篤人君が来るんだし」
『14時から披露宴だから、お昼ご飯はいらないよ 笑』
「篤人君なら食べるだろう」
『食べないと思う 笑』
「篤人君が好きな寿司はなんだ？」
『だからお父さん。食べないって 笑』
「せっかく遠い所から来てくれるんだからな」



私の意見を無視し近所のお寿司屋さんに電話をしようとしたお父さんは「お父さん！浮かれすぎよ」と、お母さんに怒られていた。







…明日、篤人に会えるんだ。


たった2週間余りしか離れていないのに篤人と会えると思うだけで、胸がドキドキと高鳴って。
鏡に映る自分の嬉しそうな顔に、少し笑った。









咲ちゃんの結婚式当日。
晴と一緒にいつも通う美容院に行くと、いつも担当してくれる実花さんが笑顔で待っていてくれた。



レンタルした着物を、テキパキと着付けてくれる実花さん。
晴と実花さんと色々な話していると、あっという間にヘアメイクも終わっていた。





「それにしても、Aちゃんが青色の着物を選ぶなんて意外だね」
『はい。でもこの色にして、良かった 笑』
「絶対ピンクを選ぶと思ってた」
『青色、大好きなんです 笑』
「初めて聞いた」
『はい。内緒にしてたので 笑』



黄色の着物を着た晴が「Aの彼氏、青色が好きなんですよ」と口を挟み、「どんな人なの？Aちゃんの彼って」と興味津々の実花さんをなんとかはぐらかし、美容院を後にした。






「うん、可愛い。ウッチーのニヤける顔が、今から想像つく 笑」
『あはは。晴も似合ってる。でも黄色を選ぶなんて、珍しい』
「Aはウッチーのチームカラーでしょ。だから、私も麻也のチームカラーを着ようと思って」
『麻也、喜ぶね』
「っていうのは建前で。ただ、この着物が可愛かっただけ」
『麻也には、フェンロの色を選んだって言っておく 笑』
「よろしく、A」








家で私達を出迎えたのは、麻也だった。


「お帰り」
『あれ、麻也。早いね 笑』
「おじさんから電話が来て。寿司食えって 笑」



笑う麻也の後に続きリビングに入ると、お寿司を食べている篤人と目が合った。
ソファーでは、立ったり座ったりを繰り返すお父さん。







「イクラ、残しておいたからね」


表情を変えずにお寿司を口に運ぶ篤人。
目の前に篤人がいる事が、嬉しくて堪らなかった。

10→←8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す