ラブセレナーデ7

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「ウッシー。コーヒー飲みに行かないか？」



急いでクラブハウスを出ようとした時に、パパに腕を掴まれた。
俺の答えは決まっている。

「俺は帰る」





そう言えばパパが「恋人が家で待ってるのか？」と、俺をからかって。
「さぁね。教えない」と言い、その場を立ち去った。






微かに聞こえて来たのは、パパの会話。

「ウッシーの恋人、可愛いよな。でも俺はきっと興奮は出来ないな。なんせ、ペチャパイだから」



くるりと向きを変え、パパのおでこにゴツンという鈍い音のするデコピンを食らわせた。









赤信号にイライラして。
前を走る遅いトラックにイライラして。
青信号なのになかなか進まない車にイライラして。


1秒でも早く、家に帰りたかった。









駐車場に車を止め、車の中から家の様子を伺う。
目が合ったAが、嬉しそうに微笑んだ。




…スゲー逢いたかった。



ニヤニヤする顔を抑えながら、冷静を装って玄関を開ける。





俺を出迎えてくれたのは、赤い自転車。
”ただいま” と書かれた紙が乗せられたスリッパ。

そして、俺の大好きな笑顔。
『お帰り、篤人』






二人の生活が、また今日から始まる。









『洗濯物出すね』
「A。その前にこっち」

俺の座るソファーの隣を叩けば、Aは嬉しそうに笑って。
我慢出来ずにAの腕を引っ張り、俺の胸に抱き寄せた。




鼻をくすぐるAの香り。
Aの体温。



スゲー、幸せ。




ゆっくりと重ねた唇に、心が震えた。








「…そういえば、さ」
『なに？』


Aを抱き寄せたまま、キャンプ中もずっと気になっていたあの事を何気なく問う。





「…プール、行ったんだね」
『うん。よく知ってるね』
「…麻也に、晴ちゃんから画像が送られて来た」
『いつの間に 笑』
「一枚もカメラ目線無かったけど。……あれ撮ってたの、晴ちゃんの弟？」
『そう。晴の家に行ったら、ヒマだから俺も行くって』
「晴ちゃんに似てるね。……結構、いい男っぽかった」
『小さい頃から陸の事見てるから、全然わかんない 笑』
「陸っていうんだ」
『そう 笑』


俺を屈託の無い笑顔で見るA。





…なに晴ちゃんの弟に嫉妬してんだ、俺。
ダセーな。


その笑顔に、ヤキモキしていた事を恥じた。





でもさ、A。
水着は、もっと地味なのにしてね。
そうだな。ワンピースみたいなヤツならいいよ。
なるべく胸もお腹も隠す様にね。



今日もきっと、俺の愛の方が深い。

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