ラブセレナーデ7

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空港に降り立つと、今ではもう慣れたこの国独特の香りが鼻を霞めた。
いつもは篤人が空港で待っていてくれるのだが、今回はまだ篤人はキャンプ中。

篤人から送られたメッセージを頼りに、ゲルゼンキルヒェンに向かう鉄道乗り場に向かう。








”わからなかったら駅員にこれ見せて。そしたら、間違いなく乗れるから”

そのメッセージの下に書かれた「私はゲルゼンキルヒェンまで行きたいです」というドイツ語を見ながら、駅員さんを捜す。




無事鉄道にも乗れボーっと窓の外を見ていると、小さい男の子が私の前の席に座った。
その子はシャルケのリュックを大事そうに抱えていて、その姿がなんだか私まで嬉しい。



男の子はしきりにドイツ語で話しかけてくれるが、まだドイツ語が充分ではない私にはチンプンカンプン。
その様子を見たお母さんが、英語で訳してくれる。





「日本人？」
「そうだよ。格好いいリュックだね」
「僕は大人になったらシャルケに入団して、10番を背負うんだ」
「素敵だね」
「日本人なら、ウッシーって知ってる？」
「知ってるよ」
「この前イベントで、ウッシーと写真撮ったんだ。見る？」
「うん」
「いいヤツなんだよ、ウッシーって」


その子はリュックから大事そうに、一枚の写真を取り出した。
そこに写っていたのは、男の子の隣にしゃがみ肩を抱いて笑顔でカメラを見ている篤人。


その篤人の優しい表情に、胸がキュッと鳴った。




早く逢いたい。
早く逢いたい。


私の逸る気持ちを乗せ、鉄道はゲルゼンキルヒェンに向かう。








”駅についたら、タクシーの人にこのメール見せて。そしたら家に帰れるから”


最後まで過保護の篤人に従い、無事家へとついた。
外から家を見上げ、また胸が高鳴る。




もうすぐ、篤人に逢えるんだ。
また、いつもの生活が始まる。






篤人のオフ中に日本で過ごした毎日は、本当に楽しくて。



晴の笑顔。
お父さんとお母さんの笑顔。
地元の友達の笑顔。
おいしい和食。
ちゃんと通じる言葉。
近所のコンビニ。
たくさんはしゃいだプール。
晴に連れて行ってもらった温泉。



それでも、やはり心にポッカリと穴が空いている気がして。
その答えが、家を見上げた時に出た。



やっぱり私の居場所は、ここなんだ。







玄関を開けると私を出迎えてくれたのは、赤い自転車。
そして、お揃いになっているスリッパ。


そのスリッパの上には、きれいな字で書かれたメモが乗せられていた。






”お帰り”

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