ラブセレナーデ7

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最後の1分は時計の秒針に合わせ、一緒に数えていた。
ラスト10秒で、腰を浮かせる。


5.4.3.2.1
ゼロと同時に、奥の部屋へと向かった。





脱衣所にきっちり畳んである、Aの浴衣。
その浴衣をじっと見ながら、急いで浴衣を脱ぎ捨てる。

耳を済ませば風呂から聞こえてくる微かな水音に、胸がドクンと鳴って。
一つ深呼吸をして平常心を装い、風呂に続くドアに手を掛けた。





Aの要望で暗くした風呂には、部屋の微かな明かりと月だけが照らしていて。
檜のいい香りが、鼻をくすぐる。




湯気の向こうに微かに見えるのは、Aの白い背中。
乳白色の湯に安心しているのか 俺に観念しているのかはわからないけれど、今回は風呂の真ん中に身を任せていて。
俺の近づく気配を感じ、Aの背中に緊張が走った。



チャポンと俺がお湯に入れば、またAの体が強ばって。
それに構わず、Aを後ろから抱きしめた。









「いい、湯だね」

冷静な言葉をかけるが俺の顔は緩み切っていて、どうかAが振り向きません様に とばかり頭の中で考えていた。




『……うん』

一言答えて、俯くA。
白いAのうなじが美しく、唇を押し当てる。






鼻を掠めるのは、いつもと違うシャンプーの香り。
檜の香り。
俺の大好きな、Aの香り。







あぁ、幸せ。
スゲー、幸せ。





温泉の中で俺の肌に触れるAの素肌が気持ちよく、もっと強くギュッと後ろから抱きしめる。


更に密着した二人の体
再び強ばる、Aの華奢な体。
幸せが顔に表れている、俺のだらしない頬。



自分で望んだ空間なのに、恥ずかしくて仕方無い。

それでもこの時間が一秒でも長く続きます様にと、心の中で祈っていた。







ほとんど欠けていない、丸い月。
暗闇に広がる、綺麗な緑。
檜の香り。
水面に浮かぶ、小さな花。

愛する人。




静かな、ゆっくりと流れる時間。


Aを抱きしめ直す度に水が動き、パシャリと音が鳴る。



そんな静かな時間が心地よく、ただAを抱きしめ続けた。







水面に浮かぶ花を手に取り、何気なくAの耳脇の髪に飾る。



俺の腕の中で遠慮がちに振り向いたAが、小さく微笑んで。

その表情が月に照らされ美しく、ゆっくり口づけを送った。







何度も重なる、唇。
Aを抱きしめる手にも力が入り、水面がまたパシャっと音を奏でて。




水面から覗く、白く華奢な肩。
赤くなったAの頬。




幸せな時間。

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