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「じゃあね。あっちゃん、凄い旅館に泊まらせてくれて、ありがとう」
「ありがとうも何も、お前らが勝手に来たんじゃん」
「あはは。あとは二人で、ごゆっくりどうぞ」
「早く帰れ」
「Aちゃん。あっちゃんの事、これからも宜しくね」
『はい』
「次はドイツで会おうね」
『楽しみに待ってます 笑』
何度も振り返り手を振る、莉子と楓。
Aもその度、嬉しそうに手を振る。
そんなAを見ていると目が合い『楽しかった。ね、篤人』と、更にAが嬉しそうに笑った。
ギュッとAの手を握れば、そっと握り返してくれて。
そんなAが愛しくて、仕方無い。
「さ、旅館に帰るよ。4日分、たっぷりと楽しまないとね」
俺の言葉にAの顔が赤くなり、思わずAの腰をグッと抱き寄せた。
「あちら奥が、お風呂になります。いいお湯ですので、是非ご堪能下さい」
仲居さんの言葉に、この旅行で一番の緊張が走る。
ニヤける顔を押さえるのに、俺は必死だった。
スッと閉まった襖を確認し、一つ咳払いする。
「見に行くよ。部屋風呂」
目の前に広がる、木々の緑。
贅沢な空間に佇む、小さな檜の風呂。
その風呂には、花が浮かんでいて。
乳白色の湯に少しだけガッカリしたが、Aの汗ばんだ白いうなじが頭の中で蘇り、どうしようもない程また顔がニヤけた。
いつ入る?
飯を食った後か?
今日はきっと、俺の理性が働かないだろうな。
飯を食って、この露天風呂に入って。
で、その後ゆっくり…
『…篤人?』
Aの声で我に返り、ニヤニヤしている顔をごまかす様に、もう一度咳払いをした。
「A。今日は晩飯、早めに食うよ」
俺の言葉に、またAの顔が赤くなった。
『あ、胡麻豆腐だ。嬉しい 笑』
笑顔で胡麻豆腐を食べるA。
『この旅館って、私の食べたい物ばかり出してくれる。偶然でも、凄く嬉しい 笑』
偶然な訳、ないでしょ。
全部俺が手配したんだからね。
そんな事に気づいていないAが笑顔でご飯を食べる姿を見ながら、早く食い終わらないかなという事ばかり考えていた。
「5分後に、行くから。いいね?」
『………うん』
「ほら。早く行かないと、すぐに5分経っちゃうよ」
『……うん』
「俺は、最初っから一緒でもいいんだけど」
『……先に、入る』
おずおずと奥の部屋に入る、A。
5分という時間が永遠にも感じ、俺はずっと時計を睨みつけていた。
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ライチ(プロフ) - インフルのオチ最高!時々こんな感じがあると笑えます!これからも楽しくそしてドキドキしながら読ませて頂きます!執筆、頑張ってくださいね!応援してます! (2014年2月8日 22時) (レス) id: 5e8b0ee40a (このIDを非表示/違反報告)
rockin(プロフ) - にゃけさん» にゃけさん、ありがとうございます!麻也に嵌められましたね 笑。うふふ。そしてウッチーは、数々の失態をしちゃいましたね。あー、楽しかった 笑。続編も出来ましたので、どうかお付き合い下さい! (2014年2月6日 13時) (レス) id: 8c0feb86d7 (このIDを非表示/違反報告)
rockin(プロフ) - umeさん» umeさん、ありがとうございます!オダジョーの髪型、似合わなそうですよね 笑。続編が準備出来ましたので、そちらもどうぞお付き合い下さい!いつもありがとうございます! (2014年2月6日 13時) (レス) id: 8c0feb86d7 (このIDを非表示/違反報告)
rockin(プロフ) - やよいさん» やよいさん!!まさかのオダジョーの髪型真似&撃沈です 笑。遅くなりましたが、続編で来ました。これからもお付き合い下さい! (2014年2月6日 13時) (レス) id: 8c0feb86d7 (このIDを非表示/違反報告)
にゃけ(プロフ) - こんにちは(^^)…あれ?急に?と少しドキドキしながら読み進めた上でのインフルエンザのくだり(爆笑)麻也サイド最高です!その後の内田さんの必死な様子からのオダジョー!思わず爆笑してしまいました(^◇^)麻也サイドめちゃめちゃツボです! (2014年2月4日 11時) (レス) id: a41361619d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:rockin | 作成日時:2013年12月23日 11時