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翳る ページ15

「リクヲ、今日はなんで泣いてんの??」

部屋の隅で私に背を向けるように蹲って、
いくつもの涙を頬から滑り落とすリクヲの横に
苦笑いを浮かべてしゃがみ込んで、声を掛ける。

動画の撮影で、お酒を飲んだリクヲがまた、
いつものようにこうなってしまったのだ。

「…A、」

涙で濡れた瞳を私に向けてリクヲは確かにそう言った。

まさか自分とは思いもしなかったため、私は目を見開く。

「私?私がなんかした??」

…まあ、正直に言えば心当たりしかない。
なにか言われれば、素直に謝罪しよう。

そんなことを考えているとリクヲは小さく鼻を啜った。

「最近、Aが冷たくて、寂しい……」

ぽろぽろと涙の粒を落としていくリクヲが
鼻を啜りながら小さな声で呟く。

驚きで一瞬、私は目を見開いたがすぐに原因を察し
自分の情けなさから苦笑いをこぼした。

「りっくん、」

昔、今とは程遠い、男女の壁など感じなかった昔。
大好きで、大切な友人と手を繋いで歩くことが当然だと
思っていた、ただただ無邪気に友人との明日を信じていた、昔。

そんな昔の懐かしいあだ名で彼を呼んだ。

「あたしはちゃんと、りっくんが好きだよ。
 …一番付き合いが長いから、照れ臭くて言えなかったけど。
 引け目を感じてたのかもしれない。…あたしは、男じゃないから」

私は、そんな言葉を紡いで、ふと口を止めた。
情けなかった。申し訳無かった。どこまでも自分勝手だ。

「…Aさぁ、俺らに頼ってくれないよね」

リクヲが続けた言葉に、私は目を見開いた。
心臓が抉られたような気分だ。

濡れた瞳が弱い私を見透かすように捕らえて離さない。

「…まあ、良いんだけどさ」

リクヲが寂しそうに微笑んで、また俯く。

私はそんなリクヲの背中にただ、自分の背中を預けて
自分の気持ちが伝わるように、ただ、願った。
こうすることしかできない自分が恨めしかった。

【鋼鉄の肝臓に勝て!】アバンティーズ酒飲み対決!!→←母性



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設定タグ:アバンティーズ , そらちぃ   
作品ジャンル:恋愛
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てん(プロフ) - 面白かったです!もっと評価されて良いくらい!続き楽しみです! (2020年1月2日 23時) (レス) id: 09173bd832 (このIDを非表示/違反報告)
すず - 続きないんですか? (2019年12月18日 9時) (レス) id: 5893e9c41f (このIDを非表示/違反報告)
りお - 面白かったです! 続き気になります! 頑張ってください! (2019年11月16日 15時) (レス) id: b0a4c100df (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朝凪 | 作成日時:2019年8月23日 22時

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