#8 ページ8
シゲは、のんちゃんたちと同じように4年ぶりに再開した”友人”
そう思おう、思おう、と東京にいる時からずっと言い聞かせていたのに、一目見てしまったら募り募った拗れた想いが溢れ出てこようとする。
4年前の王様ゲーム。シゲは何も悪くない。俺が、拒んでしまっただけ。
今、隣にいるしげは過去のことはなかったかのように振る舞ってくれている。流星がいるからかもしれないが。
今日は8月1日。祭り当日は9月1日。この一ヶ月間を普通に過ごす。ただそれだけ。
高校生時代やって普通にシゲと過ごしてたやん、俺。大丈夫。そう、言い聞かせるしかない。
そして始まった練習。
思いの外みんな太鼓の叩き方も笛の吹き方も覚えていた。小学生は初めての子も多いから、社会人が教えながら練習する。
俺の隣ではシゲ、後ろには流星、流星の隣でのんちゃんが大太鼓を叩いている。流星はドラム経験者やから慣れるのも早いだろう。
笛の音を聞きながら太鼓のスピードとリズムを合わせる。笛は太鼓の音を聞きながらスピードとリズムを合わせる。鐘も然り。これが一つの音色になっていく。それは最高の一体感となり、空気が一つになるような感覚。
久しぶりの感覚に体が喜んでいるようだった。そうそう、俺はこの一体感が好きで太鼓を叩いているのだ、と。
そして隣を見ると、真剣な眼差しでバチを振りかざすシゲ。4年前はあんなに頼りなさそうな線の細い体だったのに、力強い音を響かせられる二の腕になっていた。
見ないように、見ないように、と思っていても腕を振り翳した時に彼は視界に入ってしまうし、時々楽しいなあ!というふうにこちらを見てくるし。目のやり場に少しだけ困った。しかし俺も大概お祭り男だから集中すればすぐに太鼓に夢中になった。
「やっば!運動してなさすぎて二の腕周りもう痛いんやけど!」
たったの10分でみんなの体が悲鳴を上げている。いつも動かさない筋肉を動かしているせいだ。
「流星隣の俺の見様見真似なのにめっちゃ叩けてるで!こいつ才能あるんちゃう!?」
とのんちゃんは流星をベタ褒め。流星は心なしか照れている。可愛い。
そんなこんなで学生たちがおうちにいなければいけない時間が迫ってきていたため、初日の練習はお開きになった。
231人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ろばたけ | 作成日時:2023年11月10日 2時