あの夏この夏（赤×緑） (ページ3)

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ーーー2019年回想ーーー

あれは紛れもなく恋だった。どうしようもなく好きだった。シゲのことが。

学年は違えど、休み時間になると、”神ちゃーーん！”って走ってくるシゲが、”神ちゃんの笛なきゃ太鼓叩けへん”なんていうシゲが、一丁前に勉強を得意げに教えてくれるシゲが、この上なく好きだった。

もちろん、この好意は周囲にも、もちろん本人にもバレないように隠してきたつもりだ。ただ、のんちゃんにはバレたので全部包み隠さず喋っている。(本当によく周りを見れる子だから隠し事などできない。)

なあ！君名前なんて言うん？と聞いてきた、中一の新入生歓迎会のあの日。太陽のような笑顔の君に恋に落ちた。一目惚れの初恋だった。兄の恋人が男の方だったから、男の人を好きになることに抵抗はなかった。そして俺の人生の中心はシゲになった。

もしシゲが太陽だったら俺は太陽を追いかけて咲き続けるひまわり。そんな関係。

シゲが運動会の実行委員をするから俺もやる。シゲが生徒会に入っていたから俺も入る。シゲが祭りで大太鼓を叩いていたから、笛しかやっていなかった俺も大太鼓を始めた。今思えば金魚のフンそのものすぎて笑けてくる。

だからずっとシゲとは中学校でも高校でも一緒にいた。仲のいい友人として。ほんと神ちゃんとシゲは仲ええなあってみんなに言われた。そんな時決まってシゲが、「俺が神ちゃんと一緒におりたいからおるねん！俺の神ちゃんやで！」って返す。嬉しいけど嬉しくない。だってシゲは俺のこと好きだけど好きじゃないから。

複雑な気持ちだけど、シゲに想いを伝えるという選択肢はさらさらなかった。ずっと友達として隣にいる。その意思は確固たるものだった。