only you

春尾さん ページ19

大学3年になった


私の声は相変わらず出ない


まるで声を盗られた人魚姫のように。


.

.



手話での会話にも慣れて

春尾さんとの会話も

手話を始めたてのときと比べると、すごくスムーズに会話できるようになった




手話で分からない言葉はほとんどなくなって、


バイトも学校での生活も


1人での生活にも慣れた頃




少し久しぶりに春尾さんと会った




私の正面に座る彼に



『私ね、これから先1人で生きていく。

もう人と関わりたくない、裏切られたくない』




まっすぐ目を見てそう伝えた


春尾さんは、


ゆっくりと手を動かして


春「じゃあ、
1人で出来ないことがあったときは
僕が代わりにやってあげるし、一緒にやってあげます。


無理はしないで生きてほしい。


困ったらいつでも連絡してください」



優しい顔でそう言ってくれた



『うん、ありがとう

重いもの持つときすぐ呼ぶから、すぐ来てね』


笑いながら、


手話で言葉を紡ぐと


キョトンとした目をした後、

睨むような目をして



春「僕のこと引っ越し業者だと思ってる？

こう見えてひ弱だよ？」



その言葉を見て


お互い一瞬動きが止まり、




ぷっ、




カフェでふたり笑いあった





お父さんでもなく、お母さんでもない



お兄ちゃんでもないけど



どこか懐かしい温かさと優しさを持つ人



本当に一人ぼっちな私を救ってくれた人



心の底に芯の強さを持つ、私にとって唯一の家族





春尾さん、あなたでよかった。ありがとう。



これからもよろしくね

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