09 蘭side ページ10
まだ話は終わってないのに電話ガチャ切りしやがって。
苛立ちを隠し切れず、玄関前で待機する。つま先を上下に動かして床をトントンとリズミカルに叩いていた。
扉が開き、帰ってきたAと視線が重なる。元々大きめの瞳は更に大きく開かれて、そのまま瞳が落ちてしまうのではないかと思うくらい。
逸らすように目を伏せ、俺の横を通り過ぎようとする。オドオドしているのではなく、見限っているような態度を見せつけられた気がした。
Aの腕を掴み、動きが止まった。
随分と派手な服装で、肩や脚が出ている。手入れが行き届いている綺麗な艶のある黒髪はアイロンで巻かれており、清楚なイメージの強いAの面影は皆無。
メイクもいつもはふんわりと色乗せるくらいのナチュラルメイクなのに、唇には赤みの強いリップで色づけられており、大人の女を彷彿とさせていた。
いつもと違う雰囲気にドキりと息を呑むが、コレで男を誘惑しているのかと思うと尚、腹が立つ。
「おい、俺になんかいう事ねえの?」
問いかけると数秒考える素振りを見せて、ニコリと微笑んだ。
「ただいま♡」
「違うだろ。……途中で電話切りやがって、ふざけんなよ。」
「ふざけてない。蘭が今まで好き勝手してたの許してたんだから私も好きにさせてよ。」
俺の顔を見上げたAは怒りを含んだ瞳で睨みつける。わざとらしく圧をかけて見下ろすが、怯える様子など一切見せない。
「お前、自分が誰の嫁か分かって言ってんのか?」
今までのAだったら、素直に「ごめんなさい」と泣いて謝っていただろう。でも、今はもう違う。
「そうやって脅せばいいと思ってる所、好きじゃない。」
嫌いと言われなかっただけマシだと思えばいいのか。好きじゃない、なんて付き合ってから今まで1度も言われた事が無かったからかショックが大きい。
言い返す言葉が見当たらず、絶句していると腕を緩く振り払われる。
Aは掴まれた腕を一瞥してから大きく溜息をついた。白い肌に俺の指の形にほんのりと赤みをさしていた。それを見ていた隙に自分の部屋へと戻っていった。
「おい、話はまだ終わってねえよ。」
反射的に声を荒げてもAは聞こえないフリをして振り返る事は無い。
肌を見せる服装を俺の前でしていなかったからか、Aは妙に瘦せ細っているように見えた。
元々華奢だったけど、掴んだ腕もあんなに細かったか……?と疑問が浮上する。
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メイ(プロフ) - 最後まで読みました!!めっちゃ面白かったです!!ありがとうございました!! (4月14日 19時) (レス) @page50 id: 036127fc08 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - はるかさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️そう言っていただけてとても嬉しいです…!ありがとうございます。完結まであともう少しお付き合い下さい♡ (3月26日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - 作者から作品を探すぐらいさきなさんの書くお話が好きです。更新楽しみにしています。 (3月24日 1時) (レス) @page37 id: 2fa442bcb8 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - リハさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️とても嬉しいです♡更新ちまちま進めていきますね🫶🏻 (3月16日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
リハ - とても面白くて大好きです!更新ファイト❣️ (3月15日 22時) (レス) @page28 id: fb4d5611fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2024年2月23日 0時