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2軒目の営業時間が終わり、店から出る。
カクちゃんは何処か心配そうだ。蘭と私の関係を良好だと信じてやまなかったのだろう。
私も蘭も、外面だけはいいから無理もない。
「大丈夫か?」
「……大丈夫。カクちゃん、今日はありがとう。」
夜の街はまだ暫くは眠らなさそうで賑やかだ。私の声すらもカクちゃんに届いているのか分からないくらい。
浮ついた気持ちがあるから、浮気。
身体を重ねていなくてもやましい思いはなくとも、浮ついてしまった気持ちがある時点で、浮気なのだ。
だから、ある意味コレは浮気なのかもしれない。
相手がカクちゃんだから何も起きてないだけ。
「それは良い。かなり飲んでたけど酔ってないか?」
「……酔ってない。でも、また呼んだら会いに来てね。」
「仕事じゃなかったらな。」
カクちゃんを巻き込んでしまって罪悪感が無い訳じゃない。カクちゃん、ごめんね。
「ありがとう、じゃあタクシーで帰るからまたね♡」
カクちゃんに手を振ってタクシーへと乗る。走り出したタクシーは家へと向かって行った。
もう午前25時。どうせ蘭はでかい図体でベッドを占領して眠っているだろうと油断しきっていた。
扉を開けると玄関には蘭が無言で腕を組んで突っ立っていた。
まるで蘭の姿が見えていないと言わんばかりに私は蘭の横を素通りしようとした。が、そう上手くはいかない。
「おい、俺になんかいう事ねえの?」
「ただいま♡」
「違うだろ。……途中で電話切りやがって、ふざけんなよ。」
「ふざけてない。蘭が今まで好き勝手してたの許してたんだから私も好きにさせてよ。」
蘭の顔を見上げて睨みつけるといつも以上に冷徹そうな瞳で私を見下ろしていた。
「お前、自分が誰の嫁か分かって言ってんのか?」
今までの私だったら凄めば怯んで謝罪をしていた。愛してる人と喧嘩する事が嫌だったから。
「そうやって脅せばいいと思ってる所、好きじゃない。」
はっきり言えば、蘭は動揺を見せる。それはそうだ。従順に頷くだけの女が言い返してくるのだから。
無理やり掴まれた腕を解いて、自分の部屋へと戻る。後ろで何か言われているけれど、そんな怒号も聞こえないフリ。
蘭の顔を見ないようにした。
カクちゃんに、「今日はありがとね〜」とメッセージだけ送り、そっとスマホを閉じた。
少しくらい、私の気持ち分かってよ。ごめん、もうしないって言ってくれるだけで私は良いのに。
蘭のバカ。
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メイ(プロフ) - 最後まで読みました!!めっちゃ面白かったです!!ありがとうございました!! (4月14日 19時) (レス) @page50 id: 036127fc08 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - はるかさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️そう言っていただけてとても嬉しいです…!ありがとうございます。完結まであともう少しお付き合い下さい♡ (3月26日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - 作者から作品を探すぐらいさきなさんの書くお話が好きです。更新楽しみにしています。 (3月24日 1時) (レス) @page37 id: 2fa442bcb8 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - リハさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️とても嬉しいです♡更新ちまちま進めていきますね🫶🏻 (3月16日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
リハ - とても面白くて大好きです!更新ファイト❣️ (3月15日 22時) (レス) @page28 id: fb4d5611fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2024年2月23日 0時