45 蘭side ページ46
「捨ててもいい」と言ったAの表情は何処か穏やかに見えた。
俺の手から解放される可能性に安堵や喜びからなのか、はたまた別の感情があるのかは読めない。
「俺が捨てたらAはどうやって生きてくんだよ。」
……俺が聞きたいのはこんな事じゃないのに。上手く言葉に出来ない自分に無性に腹が立って仕方がない。
「適当に生きてくよ。私も大人だし、何とか出来る。」
少し前までは守られてばかりの弱い女だと思い込んでいたが、Aはきっと俺が想像している以上に凛々しくて独立できるような女なのだろう。
俺がAを捨てるんじゃない、Aが俺を捨てようとしている。そんな事を考えるだけで、胸の奥がズキズキと痛くなる。
「Aが居なくなったら俺はどうやって生きていけばいい?」
プライド高く、威張り散らしてた男の口からこんな情けない言葉を聞いたAは心底呆れただろう。それでも……Aが傍に居ない今後の人生なんて考えたくない。
1度引っ込んだ涙が再び溢れてくる。それを見たAは微かに驚いたような表情をしてすぐに優しく微笑んでから目を伏せる。
「蘭の事、支えてくれる素敵な人は現れるから大丈夫だよ。」
「俺はAに傍に居て欲しい。Aが俺に怒ったあの日から少しずつ過去の事思い出してた。Aの事、傷つけて嫌な思いさせてる事に気づいて今更だけど後悔してる。浮気も嫌な事も全部、今まで本当にごめん。Aの嫌がる事2度としないから離れたくない。」
Aの視線は俺の方へ戻ってきて、明らかに見せる困惑。唇をきゅっと閉じ、数秒見つめ合ったまま続いていく沈黙。
億劫とも躊躇とも取れるような複雑そうな顔をしながら無理やり言葉を紡いでいった。
「……ありのままの私じゃ、愛して貰える自信無い。……冷たくされるのはもう嫌なの。」
弱々しい声で言葉を言い終えるとぽつり、と儚さを残すように静かにゆっくりと涙を1粒落としてからはぽろぽろとAの頬に涙が伝っていった。
俺がAにし続けてきた仕打ちの結果が顕著に現れる。もっと俺がAを大切に「愛してる」や「好き」だという言葉を伝えていたら、きっとこんな風に泣かせる事は無かったのだろう。
「どんなAでも、俺はAの事を愛せるよ。冷たくしたりしないって約束もする、だから……俺から離れようとするなよ。」
肯定する返事は無かった。けれど、Aは泣きながら俺の胸板に顔を埋めた。
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メイ(プロフ) - 最後まで読みました!!めっちゃ面白かったです!!ありがとうございました!! (4月14日 19時) (レス) @page50 id: 036127fc08 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - はるかさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️そう言っていただけてとても嬉しいです…!ありがとうございます。完結まであともう少しお付き合い下さい♡ (3月26日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - 作者から作品を探すぐらいさきなさんの書くお話が好きです。更新楽しみにしています。 (3月24日 1時) (レス) @page37 id: 2fa442bcb8 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - リハさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️とても嬉しいです♡更新ちまちま進めていきますね🫶🏻 (3月16日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
リハ - とても面白くて大好きです!更新ファイト❣️ (3月15日 22時) (レス) @page28 id: fb4d5611fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2024年2月23日 0時