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キャバクラへ足を運ぶと案の定春ちゃんは先に来ているらしくいつもの如くVIPルームで待っているとの事だった。
店内のボーイに案内されてVIPルームへと足を進めると客でもない私が足繁く通っているのが異様な光景なのか店内にいるキャバ嬢の視線が突き刺さるような気がした。
「遅い、俺を待たせてんじゃねえよ。」
ごめん、と謝ってから春ちゃんの隣に腰掛けると、空のグラスに酒を注ごうとする。ボトルを掴んでいる手を止めるように、私は春ちゃんの手を握っていた。
「……今日はお酒辞めとく。最近、飲みすぎてたから太ったかもしれなくて。」
もっともらしい無難な理由を伝えると、春ちゃんは半分納得のいっていなさそうな顔をしながらもボトルを机に置いた。その動作を見届けると自然に握っていた手は離れた。
「太ったどころかオマエ痩せすぎだろ……。アイツ、そんなガリガリの体型が好きなのか?」
「え、どうだろうね。特に体型は言われた事無かったけど……。でも、一応ね?」
曖昧な言葉を繋いで話を終わらせる。いつもは晩酌しながら会話をしていたから互いに気遣う事も無く饒舌だったが、今は沈黙が流れ込んでくる。それが気まずいとかは無く、言葉が見つからないままで口を噤んでいた。
しかし、数秒の沈黙を自然に破ったのは春ちゃんだった。
「本当にアイツの事、好きなんだな。」
「急に何?そりゃ、結婚したいくらい好きだったし今でも愛はあるよ。ちょっとくらい痛い目見ろって思ってはいるけど。」
「男の趣味マジで悪いと思うけど、オマエのそういう強気な所は悪くねえわ。」
さりげなく男の趣味が悪いとバカにされたが、春ちゃん視点ではそう思ってしまっても仕方がないのだろう。……仕事押し付けられているし。
「ありがと、春ちゃん。」
私達が言葉を交わしている別の場所から何やら騒がしい声が聞こえてくる。男の焦ったような声と怒鳴るような声が混じり合い、飛び交っていた。酔いすぎて客同士の言い合いがヒートアップでもしているのだろう。
……そんな予想は大外れ。
次第に男達の声が近くなり、VIPルームへとボーイが勢いよく倒れて入って来た。立ち上がってボーイに駆け寄ろうとした足がピタリ、と止まった。
カツカツと靴音がやけに響き、私達の元へ近づいてくる。やっと絞り出したような声で、彼の名を呼んでいた気がする。
「……蘭。」
目の前には怒りを宿した瞳で私を真っ直ぐに見据えた蘭が居た。
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メイ(プロフ) - 最後まで読みました!!めっちゃ面白かったです!!ありがとうございました!! (4月14日 19時) (レス) @page50 id: 036127fc08 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - はるかさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️そう言っていただけてとても嬉しいです…!ありがとうございます。完結まであともう少しお付き合い下さい♡ (3月26日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - 作者から作品を探すぐらいさきなさんの書くお話が好きです。更新楽しみにしています。 (3月24日 1時) (レス) @page37 id: 2fa442bcb8 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - リハさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️とても嬉しいです♡更新ちまちま進めていきますね🫶🏻 (3月16日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
リハ - とても面白くて大好きです!更新ファイト❣️ (3月15日 22時) (レス) @page28 id: fb4d5611fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2024年2月23日 0時