浮気、されちゃった。【灰谷蘭】

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最後に春ちゃんと会ったのは1週間前。

その間、メッセージの1つも無くて本当に利害の一致の為に形成されている関係。昨晩にただ一言だけ「明日、20時にいつもの場所に来い。」とだけ残されていたトーク欄。

この1週間の中で私が知ってはならぬ事が起こっていたのだろう。蘭も帰りが遅かったようで私が寝ている間に帰ってきていた形跡があった。けれど、1度も蘭の姿を見る事が無いまま現在に至る。

春ちゃんと会って話しているうちに膨張したのは不安という感情。彼が「俺等は常に死と隣合わせだからなァ。……家族が居たところで足枷になるだけなのにな。」なんて酒の勢いで滑らせたであろう言葉が未だに記憶に残っていた。

……やはり、蘭を含む彼等は危険な事ばかりしているのだろう。数日で何度、蘭とのトーク欄を開いたのか分からない。

心配している気持ちもあるが、1番引っかかっているのは……私が居る事で蘭の足枷になってしまっているのかもしれないという事。

反社の事なんて何1つ理解出来ないし、月に1度銀行へ記帳しに行く度に口座預金は一般的な仕事をしていたらあり得ないような額が振り込まれているし。

蘭は私の事を何も分かっていないと思っていたけれど、それは私も同じだった。蘭の仕事の事なんて何も知らない。

家に帰って来た蘭はイライラしていて八つ当たりしていただけで仕事の愚痴だとか悩みとか何1つ言った事なんて無かった。寧ろ、仕事の話は遠ざけていたのかもしれない。

春ちゃんの言葉を聞いてから様々な事を考えていたけれど、分からない問題を解こうと思っても解決なんて勿論出来る訳も無い。

……でも、今更蘭に何を聞けばいいのか分からないし、心配している事を伝えても鬱陶しく思われるだけな気もしてメッセージ1つ送る事にも躊躇する。

悶々としていても時間は刻一刻と進んで行く。とりあえず、春ちゃんに会いに行こう。

玄関先で靴を履いていると、微かに胃がズキズキと痛む感覚に襲われる。すぐに治まるだろうと立ち上がろうとするが痛くて立ち上がる事がなかなか出来ない。

ズキズキする感覚がどんどん短くなってきており、逆らうようにゆっくりと呼吸をする。数分経って、やっとの思いで痛みが治まり、ゆっくりと立ち上がる。

残念だけれど、今日は美味しくて最高級のお酒を飲むのは辞めておこう。本当に最近、胃の調子が悪いし……あと数日続いたら病院にでも行こう。

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