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賑やかな夜の街に似つかわしくないくらいの落ち着いた店内。
何時もの如く、女1人でバーカウンターの端で何も考えずに好きなカクテルを飲み干していた。
「良い飲みっぷりだね、お姉さん。」
席を勝手に移動してきたらしい見知らぬ男。パッとしない、が第一印象で顔がぼやけて見える。それ程までに酔っぱらってはいないが、興味が無い故なのだろう。
「……どうも。」
「良かったらコレも飲む?まだ口付けてないし、俺のおススメなんだ。」
スッと差し出されたグラス。白っぽさに青みがかった感じの色……ブルームーン。カクテル言葉は奇跡の予感。随分とベタな物を寄越してきたが、ブルームーンにしては色味がもう少し違うような気もする。
グラスを見つめていた視線を男に移す。印象の薄い顔で唇の形だけ三日月のようにはっきりとしていた。
「遠慮しなくていいよ。」
声だけは無駄に爽やかで胡散臭い。グラスに手を伸ばして、唇へと近づける。
「……!」
グラスが唇に当たる前に男と私の間から伸びてきた手が私の手からグラスを奪い取り、次の瞬間に盛大にガラス細工が粉々になったような音が響く。
落ち着いていた店内が一瞬ざわつき、何があったのかと視線がこちらの方向に集中する。
近くにいる私ですら何が起こっているのか分からず、呆然としていた。
「このカクテルに薬混ぜてンだろ。最近の薬は優秀だからなァ、液体の中に入れると色が変わるように出来てんだよ。」
私からグラスを奪い取った男がご丁寧に説明してくれたお陰で隣にいる男の目論見を察した。恐らく、強い睡眠薬でも入れられていたのだろう。
私が感じたカクテルの色の違和感の正体はどうやらコレだったようだ。
キッと強く男を睨みつけると盛大に舌打ちをして席から離れて行く。スタッフがこちらへやってきて、急いで散らかったグラスと零れているカクテルの掃除をしていた。
「女がこんな所で1人。……そりゃ、ワンチャンあるって思われても仕方がねえよなァ?寧ろ、それが目的だったか?」
「違います。……ストレス解消に飲みに来てるだけで。」
暗がりの店内でも良く目立つ綺麗な桜色の髪。スラリと細身体型で小顔。……何よりも人の目を惹くであろう、中性的な顔貌。まさに造形美ともいえるくらいだ。
「そうかよ。」
男が座っていた席に代わりに綺麗な顔貌の男が座り、目を細めた。
「話、聞いてやろーか?」
肘をついて首を傾けた男。上下共に長く量のある睫毛が瞬きする度に揺れていた。
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メイ(プロフ) - 最後まで読みました!!めっちゃ面白かったです!!ありがとうございました!! (4月14日 19時) (レス) @page50 id: 036127fc08 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - はるかさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️そう言っていただけてとても嬉しいです…!ありがとうございます。完結まであともう少しお付き合い下さい♡ (3月26日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - 作者から作品を探すぐらいさきなさんの書くお話が好きです。更新楽しみにしています。 (3月24日 1時) (レス) @page37 id: 2fa442bcb8 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - リハさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️とても嬉しいです♡更新ちまちま進めていきますね🫶🏻 (3月16日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
リハ - とても面白くて大好きです!更新ファイト❣️ (3月15日 22時) (レス) @page28 id: fb4d5611fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2024年2月23日 0時