29 蘭side ページ30
結局、家事はAが全てこなし、現在に至る。
いくらネットでレシピが転がってるとはいえ、料理経験があまり無い俺は出来る気がしなかった。作る過程を傍で見てて物凄く大変な事が分かった。
Aが作ってくれた料理を機嫌が悪い時に俺は躊躇なくゴミ箱へ捨てていた。Aはどんな思いで毎回見ていたのだろう。
体調が悪くても俺にもたれ掛かってこようとはしない。結婚前後の俺達だったら、そんな事は無かったと思う。
生理痛が酷かったのは昔からだし、付き合ってた時はさりげなく甘えてきてもたれ掛かったりもしてきていた。
当時は可愛くて仕方が無かったし、本気で大事にしたい相手だって確信めいた気持ちで一杯だった。
今ではガラリと変わってしまった歪な夫婦関係。変わったんじゃない、俺が変えてしまった。本来であれば、とっくに破綻していた関係。
そっと背後からAを抱きしめたのは久々だった。何をされるのかと思ったのかAは体を微かに強張らせる。
……やっぱり、物凄い痩せた。間違いなく原因は俺なのだろう。
「なぁ、まだ腹痛ぇの?大丈夫?」
不意にAの腹部を撫でる。くっついてきたときによくやってたなと懐かしくなった。
「大丈夫だから、そんな事しなくていいよ。」
鬱陶しく思っているのか、昔みたいに「ありがとう」と微笑んではくれない。……当然か。
「痛くねえなら良かった。ココア買ってきたけど淹れる?」
腹痛い時に温かいココアが飲みたいって言っていたのも、覚えてる。
「お腹いっぱいだから大丈夫。」
角が立たないようにやんわりと断られる。
……Aと前みたいに毎日が楽しくて幸せを感じられる日々に、関係に戻りたいと言ったらどうする?
なんて問いかける勇気は今の俺には無い。
「蘭が1番だよ」なんて言ったけれど、Aは俺とのこの生活に妥協しているだけなのかもしれない。
だって、俺がもし外にAを放り投げてそのままにしたらAの帰る場所は無い。頼れる友達も両親も俺が捨てさせた。
唯一頼れる当ては鶴蝶と竜胆だけ。でも、結局は俺の身近な人間でAが2人を頼る訳が無い。
こんなに悶々として罪悪感が大きくなっていくくらいなら最初からしなければ良かったのに、と咎められたら俺は何も言えない。
時にAの身体が緩く揺れる。
「A、眠い?ベッドまで運んでやろうか?」
「……お風呂入ってくる。」
逃げるみたいに俺から離れ、浴室へ向かった。
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メイ(プロフ) - 最後まで読みました!!めっちゃ面白かったです!!ありがとうございました!! (4月14日 19時) (レス) @page50 id: 036127fc08 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - はるかさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️そう言っていただけてとても嬉しいです…!ありがとうございます。完結まであともう少しお付き合い下さい♡ (3月26日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - 作者から作品を探すぐらいさきなさんの書くお話が好きです。更新楽しみにしています。 (3月24日 1時) (レス) @page37 id: 2fa442bcb8 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - リハさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️とても嬉しいです♡更新ちまちま進めていきますね🫶🏻 (3月16日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
リハ - とても面白くて大好きです!更新ファイト❣️ (3月15日 22時) (レス) @page28 id: fb4d5611fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2024年2月23日 0時