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露骨に嫌な顔をしてはっきりと言わなくても、と喉から出かけた言葉を呑み込む。
「買い物行かないと夕飯作れない。急いで買い物行ってご飯作るから休んで待ってて。ごめんね。」
言葉を紡ぐと、何が気に食わないのか更に表情が歪んでいく。その歪んだ表情でさえも、様になってしまうくらいに整った顔貌だ。紫の双眸は揺れ、刹那に歯を強く食いしばった。
「俺が言いてえのはそういう事じゃなくて……。」
デリカシーや配慮という言葉を知らなさそうな私の旦那、灰谷蘭。頭の回転が速く、賢い彼は比較的はっきりとした物言いをする。
にも関わらず、言葉を選んでいるようにも見えてしまうのは気の所為なのだろうか。
玄関先で大人2人が立ち止まっている姿は異様そのもの。蘭を避けて外へ出ようにも出られる雰囲気ではない。
「買い物なら俺が行く。……から休んでろよ。」
言葉尻が窄むように小さくなる声。俺様旦那様みたいな高圧的な態度を振る舞っていた彼は何処へ。本当に明日、台風が来るのではないのだろうかと疑いたくなる。
「薬飲んだから大丈夫。」
蘭を避けようとすると、同じ方向に身体を動かして外に行かせないように立ちはだかってくる。
「早く部屋戻れよ。」
バタン、と目の前で扉が閉まって蘭の姿が消えた。呆然と数秒立ち尽くした後、蘭の言われるがままにリビングへと踵を返す。
吸い込まれるようにソファに腰かけ、ぼんやりしていた。生理痛なんて今に始まった事ではない。毎月の恒例行事だし、毎回の事だ。でも今月は特に酷く、いつもよりも薬が効いてくる時間も遅い気がした。
それもそうだ。今まで蘭の前ではアルコールを必要最低限、蘭の気まぐれで年に数回くらいしか摂取していなかった。
しかし、蘭の態度や浮気やらで一気にアルコールを体内に入れる量が増え、ホルモンバランスが崩れてしまったのだろう。
そのせいで今月の生理痛はいつもに比べ酷いらしい。イライラが募っていたのも、涙脆くなってしまっていたのも、一気に浴びたアルコールも少なからず原因である。
生理が終わるまではアルコール摂取も夜に出歩くのも自重した方が良さそうだ。そもそも、そんな元気も起きなさそうだけれど。
うっかりまた眠ってしまわないように、背もたれに身を預けて腹部を冷やさないように先程まで使っていた掛布団を掛ける。
蘭なりに何かしらの罪悪感を抱えているのだろうか?蘭が何を考えているのか、理解できないままだ。
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メイ(プロフ) - 最後まで読みました!!めっちゃ面白かったです!!ありがとうございました!! (4月14日 19時) (レス) @page50 id: 036127fc08 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - はるかさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️そう言っていただけてとても嬉しいです…!ありがとうございます。完結まであともう少しお付き合い下さい♡ (3月26日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - 作者から作品を探すぐらいさきなさんの書くお話が好きです。更新楽しみにしています。 (3月24日 1時) (レス) @page37 id: 2fa442bcb8 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - リハさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️とても嬉しいです♡更新ちまちま進めていきますね🫶🏻 (3月16日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
リハ - とても面白くて大好きです!更新ファイト❣️ (3月15日 22時) (レス) @page28 id: fb4d5611fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2024年2月23日 0時