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結局、弁当持たずに家を出ていった蘭。
ソファに身を委ねて、手に持ったままの袋の中をカサカサと漁る。薬を取り出し、冷蔵庫に入っているペットボトルに手を伸ばした。
薬と水を喉に流し込み、再びソファへと戻る。暫くは気怠さと痛みで動けそうにない。薬が効いてきて、落ち着いたら家事をしよう。
蘭が体調の心配してくれるなんて、明日は台風でも来るのだろうか?そのレベルで珍しい事である。
いつもだったら「使えね」とか「家に籠ってるクセにいいご身分だな?」とか言われたっておかしくはない。もはや、それが今までおかしい事だったのだと気づく事にも随分を時間を要した気もするけれど。
……なんて考えていられたのも束の間。腹部に激痛はまだ走り続けている。ソファに放置されている蘭が使っていた掛布団を引き寄せて横になる。
ベッドにくらべたら寝心地は最悪。蘭は数日もの間、ここで眠っていた。さぞ、寝にくくて快眠出来なかっただろう。
掛布団には蘭がいつもつけている香水の残り香がする。体調が悪いのも相まって、メンタル状態が最悪な今の私はこんな匂いに包まれてしまったら無意識に涙が零れてくる。
泣き疲れて、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
傍にあるスマホで時刻を確認すると、もう17時を回っている。ちょうど薬が切れたタイミングで起きたらしく、また激痛に襲われて痛みに蝕まれていた。
今日はただでさえ、弁当を作らなかったのに夕飯まで作らないとなると蘭の今朝の優しい態度も変わってくるに違いない。
重たい体を無理やり起こして、薬を口の中に押し込んだ。恐らく、買い物に行っている間に多少楽になるだろう。痛みが引けば、身体は動かせる。
昼間に行うはずだった家事も一切出来ていない。ご飯の準備して蘭が帰ってくる事までの時間を逆算していく。隙間時間で出来る家事をこなし、ご飯が食べ終わった後に残りの家事はやればいい。
買い物専用のマイバッグと家の鍵を鞄の中に突っ込み、玄関の方へとゆっくり歩いていく。
靴を履いて玄関のドアノブに手を掛けた途端、向かい側から隙間が出来、扉が開かれた。ビクリ、と体を跳ねさせると目の前には蘭が居た。
いつもより帰りがだいぶ早く、私の計算がここで一気に狂い戸惑う。
「……おかえり、蘭。」
「お前さぁ、そんなボサボサな髪とボロボロの顔で出掛けるなんて正気かよ。」
不快感を漂わせ、歪んだ表情には眉根を寄せて綺麗な形の唇から言葉を吐いた。
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メイ(プロフ) - 最後まで読みました!!めっちゃ面白かったです!!ありがとうございました!! (4月14日 19時) (レス) @page50 id: 036127fc08 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - はるかさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️そう言っていただけてとても嬉しいです…!ありがとうございます。完結まであともう少しお付き合い下さい♡ (3月26日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - 作者から作品を探すぐらいさきなさんの書くお話が好きです。更新楽しみにしています。 (3月24日 1時) (レス) @page37 id: 2fa442bcb8 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - リハさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️とても嬉しいです♡更新ちまちま進めていきますね🫶🏻 (3月16日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
リハ - とても面白くて大好きです!更新ファイト❣️ (3月15日 22時) (レス) @page28 id: fb4d5611fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2024年2月23日 0時