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リキュールを片手に持って一気に喉の奥へと流し込み、グラスは空っぽ。
静かにグラスをテーブルに置けば、大きな氷がカランと揺れて微かに音を立てる。
蘭の前ではあまり飲まないようにしていた反動からか、好きなカクテルを注文しては飲み干していた。
すっかり体内に溶け込み、ふわふわと倦怠感をも残すような気持ち良い心地になってきた頃。
「Aさん。」
半分呆れた様子の竜胆くんが姿を現し、豪快に飲んでいた私を見下ろしている。呼びつけたのに来てくれた出来る義弟。
「竜胆くん、来てくれてありがと♡」
「Aさんがこんなに飲んでるなんて珍しいじゃん。兄貴と喧嘩でもしたの?」
喧嘩なんて可愛らしいモノじゃない。
「違うよ。蘭の浮気癖治らないからさ〜、私も浮気させてもらう事にしたんだぁ♡」
当て付けのつもりも微塵も無い。蘭の気を引きたいだとか、ちょっと焦らせてやろうとか……そんな可愛らしい感情なんて一切芽生えていない。
ただ、今まで散々目を瞑って好き勝手させてあげてたのだから、もう私も我慢する必要は無いと思っているだけ。
「Aさん、酔いすぎ。変な冗談言うなよ。」
冷静に窘められるが、酔いすぎていないし何ならまだシラフだ。
竜胆くんも蘭も、私が実は酒豪で酔わないタイプなんて知らなかっただろう。
蘭に至っては私がお酒が弱くて直ぐに酔ってしまう女だと信じてやまない。
そんな男の理想が詰め込まれてる様な女がゴロゴロ居てたまるか、バカ。あんなの大半が演技でしょ。
酒の力を借りて、下心を酔ったフリで誤魔化す。狡くて小賢しい大人の常套手段。
「冗談じゃないよ。竜胆くん、知り合い多いじゃん?だから、私に誰でもいいから男の人紹介して♡」
「そんな事してバレたら俺が兄貴に殺されんだけど。絶対無理。」
やっぱり無理か。ま、そりゃそうだ。仮にも兄の嫁が浮気したいから男紹介しろなんて言ってくる時点で正気の沙汰じゃないし。
「だよね〜。そう言われると思ったからマッチングアプリ登録して男引っ掛けようと思ってるんだよね。」
「……Aさんってさ、酔うと人格変わる系?」
竜胆くんにも、気弱で旦那様の言う事を何でも聞いちゃう清楚可憐な女だと思われていたらしい。
本当は、ず〜〜っとバレないようにしてただけでこっちが素なのに。
男って本質すらも見抜けないバカばっかり。単純明快な生き物。
浮気してても、どうせ蘭は戻って来てたし。私も蘭の所に戻るから、好きにさせて、ね♡
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メイ(プロフ) - 最後まで読みました!!めっちゃ面白かったです!!ありがとうございました!! (4月14日 19時) (レス) @page50 id: 036127fc08 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - はるかさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️そう言っていただけてとても嬉しいです…!ありがとうございます。完結まであともう少しお付き合い下さい♡ (3月26日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - 作者から作品を探すぐらいさきなさんの書くお話が好きです。更新楽しみにしています。 (3月24日 1時) (レス) @page37 id: 2fa442bcb8 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - リハさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️とても嬉しいです♡更新ちまちま進めていきますね🫶🏻 (3月16日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
リハ - とても面白くて大好きです!更新ファイト❣️ (3月15日 22時) (レス) @page28 id: fb4d5611fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2024年2月23日 0時