00 Prologue 蘭side ページ1
毎日欲するのは水だとしても、時には狂ってしまう程酔える酒を体内に入れたい時もある。
それと同じような感覚で毎日一緒じゃ、窮屈。
俺の嫁であるAは落ち着きがあって、可愛くて優しさ溢れるような一緒に居て心地の良い女。
俺のいう事は極力叶えてくれるし、物分かりが良い。
でも、それだけじゃ物足りないし何処か満たされない。正直、我儘で振り回すくらいの女の方が魅力的。
Aが用事で家を空けている隙を見て、家に上げて嬢とイチャイチャした事もあった。会食という名の女と逢瀬なんて、もう数えきれないくらいしてる。
でも、体の関係……一線は越えていない。
きっと、Aも薄々勘づいている。それでも、俺に嫌われたくなくて問う事を我慢して、尽くしている。
その健気さが堪らなくて未だに一緒に居る。Aが俺を咎める事なんて出来る訳が無いと高を括っていたんだ。
「……蘭、ちょっといい?」
何処か躊躇いながらも上目で尋ねてくるA。いつものご機嫌取りでもしてくれるのだろうと勝手に思っていた。
でも、それは大きな間違いだった。
「コレ……リビングに落ちてたよ。浮気、してるの?」
声色は震えており、指先で摘まんでいる女物のピアス。相変わらず、控えめな態度で不安そうな瞳が揺れ、視線が重なる。
Aが問いただしてくるなんて珍しい。何と言って黙らせようかとそんな最低な事が頭に過る。
正直な話、Aじゃ物足りないけど、毎日生活を共に送りたいのはA。
そこに愛が無い訳じゃない。……只、日常の中にちょっとした刺激を求めているだけ。
「浮気なんてしてねーよ?接待で話したキャバ嬢のモンかもしれねえ。とりあえず受け取っとくわ。ごめんな?」
ヘラヘラと悪びれる様子もなく適当に謝った。いつものAなら、「そっか」と寂しそうにしながらも曖昧に微笑んで終わり。
……のはずだった。
「誰が信じるか、このクズ。今まで黙ってたけどバレてないとでも思ってた?リビングに女連れ込んで好き放題して無理なんだけど。」
耳を疑った。本当に俺の目の前に居る女はAか?あの気弱で俺の事大好きすぎて嫌われたくなくて必死なA?
驚きのあまり絶句する。言い淀んで数秒後、Aが言葉を続ける。
「でも大丈夫だよ。これからは浮気も沢山していいから安心して。……私も、蘭を見習って浮気させてもらうから♡」
ピアスを掌に置いたと思えば満面の笑みを残して、玄関の扉が強く閉まる音が残響した。
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メイ(プロフ) - 最後まで読みました!!めっちゃ面白かったです!!ありがとうございました!! (4月14日 19時) (レス) @page50 id: 036127fc08 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - はるかさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️そう言っていただけてとても嬉しいです…!ありがとうございます。完結まであともう少しお付き合い下さい♡ (3月26日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - 作者から作品を探すぐらいさきなさんの書くお話が好きです。更新楽しみにしています。 (3月24日 1時) (レス) @page37 id: 2fa442bcb8 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - リハさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️とても嬉しいです♡更新ちまちま進めていきますね🫶🏻 (3月16日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
リハ - とても面白くて大好きです!更新ファイト❣️ (3月15日 22時) (レス) @page28 id: fb4d5611fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2024年2月23日 0時