【プロセカ】音楽と、共に【青柳冬弥】 (ページ16)

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16話ページ16

「だが、父親の指導は厳しくて……。平日は朝早く起きて練習。学校から帰るとまた寝るまで練習。休日になると朝からピアノとバイオリンを弾いていた。
俺は、中学に上がる頃、とうとうその生活に耐えられなくなって、逃げ出したいと思うようになったんだ」

　普通なら、そう思うのも当然だ。

　自由が存在していないなんて……私だったら冬弥くんが思うよりも先に、逃げ出したいと思うだろう。

「そんなに厳しかったら、そうなるよね……」

「それでも俺は、時間と情熱をかけて指導してくれた父親の期待を裏切るのが申し訳なくて、逃げることを躊躇っていた。だがそんな時＿＿司先輩が言ってくれたんだ」

　冬弥くんは暗い表情から一変、優しい笑みに変わった。

「『お前の人生なんだから、お前がやりたいようにやればいい。嫌なものは、嫌と言っていい』と」

「あいつが……？」

　彰人くんは、天馬先輩がそう言ったことに驚いているようだった。

「その言葉に、俺は背中を押してもらえた。そしてそのおかげで俺は、クラシックを辞めて、彰人と出会うことができた。そして、平瀬とも」

　そっか。もしまだ冬弥くんがクラシックを続けていたら、この出会いはなかったんだ……。

「あの時の司先輩の言葉がなかったら、今の俺はいない。だから司先輩は、俺を変えてくれた……恩人なんだ」