欲求不満

21 ページ21

…







慎「さっき、怒られてました？」


『え…見てたんですか？！』


慎「たまたま、見ちゃいました 笑」





無理矢理連れてこられた時は強引な人だと思ったけど

それとは真逆でとても優しい慎くん。

やっぱり人というものは第一印象で決めてはいけないらしい。




慎「まさか同じ会社だったとは、びっくりしました」


『こっちの台詞ですよ、誰かと思いました』


慎「あれでも結構勇気振り絞って声掛けたんですよ？」


『そうなんですか？』


慎「結構人見知りで。壱馬さんとか、樹さんとかといる時は何でか大丈夫なんですけどね」





ああ、だから昨日は普通に手振ったりしてきたんだ。

不思議な人。





『あの人と仲良いってことは、慎くんもヴァンパイアなんですか？』


慎「…はい。だから僕も、Aさんの血は、飲んでみたいです」




何気なく放った一言で

慎くんの表情がころっと変わる。

気付けば、慎くんの顔が目の前1センチにまで迫っていた。




『うわ、っ』




自分の手にコーヒーが握られていたことも忘れて突き飛ばす。




慎「あ」


『…ああ！』




慎くんの真っ白なシャツに

私の飲みかけのコーヒーが綺麗なくらいに染み渡る。




『わ、本当にごめんなさい！どうしよう…いや、弁償します』


慎「いや、良いですよ。そもそも俺が驚かせたのが悪いですし」


『まあ、そうなんですけど…でも！』


慎「え？…ははっ、んー、じゃあ分かりました。弁償はいいんで」





慎「今週末、俺とデートしてください」







.

22→←20

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す