凡百人間に忌み嫌われる異能力 ページ43
『……本題に入るよ
首領が久ちゃんを解き放った』
一瞬で太宰の顔が凍り付く。
「莫迦な…！何を解き放ったか判っているのか？
Qは敵も味方も凡て滅ぼす、歩く厄災だ」
「抗争を制する為ならばポートマフィアは手段を選びません」
「何故Qが座敷牢に封印されたと思う？」
『異能力の中でも最も忌み嫌われる精神操作の異能力者だからだね』
「そうだ
Qの
詛いを発動させる契機は詛いの根源たる人形が破壊される事
但し人形が破壊された時詛いを受けるのは受信者のみ」
『そしてその受信者になる条件は、久ちゃんを傷つける事
受信者の身体には誰かに掴まれたかの様な痣ができるから判別は容易に出来る』
「……ん？此処に来た時、私を護る為と言ったね？」
太宰の目が見開かれる。
Aが俯きがちに不気味な笑みを浮かべる。
「しまった…！！」
太宰が焦った様にこの場を去って行く。
『…先帰ってて良いよ』
Aは静かに云った。
銀は一礼して去り、樋口は動揺したまま銀の後を着いて行った。
Aが向かった先は駅。
「僕は駄目だ！！！！」
敦の声が聞こえ、物陰に身を潜める。
「僕は居ちゃいけなかったんだ…」
敦が震えながら泣く声が聞こえる。
Aはそれを聞きながら拳を握る力を強めた。
「……敦くん」
太宰の落ち着いた声が聞こえると同時に乾いた音が聞こえた。
太宰が敦の頬を叩いたのだ。
「…自分を憐れむな
自分を憐れめば人生は終わり無き悪夢だよ」
その声色は、嘗て自分が太宰に背中を押して貰った際のそれに似ていた。
太宰は太宰なりに考えている事があり、それを部下や周りの人間に伝えている。
「
敵がその気なら此方も鬼札を切ろう」
太宰の声色が変わった。
『真逆…』
Aは気が付いた。
太宰の云う鬼札とは、“異能特務課と手を組む”事なのだ、と。
そして、Aが近くでこの会話を聞いていた事に太宰は気付いており、Aも太宰が気付いている事は判っていたのだとか。
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作者名：myu | 作成日時：2021年7月28日 23時
