人捜しの依頼 ページ5
織田は綺麗なヨコハマの風景を見ながら
ポートマフィアの本部ビルに最下級構成員が足を踏み入れる事はまず無い。
呼び出した人間にどんな用事があるのか、皆目検討がつかないが、この組織にいる限り彼の言葉は絶対だ。
「織田です」
名を名乗って黒服の監視に道を開けてもらう。
そして遂に執務室に入る。
「ねえエリスちゃん！ドレス着てよう、一瞬！ちょこっと！1秒さっと着るだけ！」
「イヤよ、絶対イヤ！」
「私が丹精込めて選んだのだよ？ご覧よこの深紅の
「きれいなお洋服はイヤじゃない、リンタロウのその必死さがイヤ！」
「首領、ご指示に従い参上しました」
すると、森とエリスは織田の方を向く。
一瞬時が止まったかのように思えたが、直ぐにヨコハマの街が一望できる
部屋も一段と暗くなる。
「…さて、織田くん」
「はい」
「君は何も見ていない、善いね？」
「はい、何も見ていません、首領は幼女の着替えに忙しい中、俺のような者の為に時間を割いてくれました」
一応理っておくが、織田に悪気は一切無い。
森は、ん？と上を見上げたが、まあいい、と笑って話し始めた。
「君を呼んだのは他でもない、人捜しを頼みたいのだ」
ただの人捜しを織田のような一介の構成員に任せる筈が無いのだが、
「行方不明になったのは情報員の坂口安吾くんだ」
織田以上に適した人物が何処にいるのだろうか、という内容だったのだ。
織田は少し驚きの色を見せた。
「銀の託宣だ、これを見せれば幹部でもアゴで使える
…君は幹部の太宰くんとは個人的に付き合いがあるそうだね
彼の実力は飛び抜けている
あと4〜5年もすれば私を殺して首領の椅子に座っているだろうねぇ」
織田は森からそれを受け取り、薄茶色の外套を靡かせながら踵を返した。
「織田くん」
その外套の内側に見えた拳銃二丁について森が口を開いた。
「…君は肩から下げているその銃で人を殺した事が一度も無いという噂だが、何故かね？」
「……その質問は組織の長としての命令ですか？」
織田は聞かれたくない事を突かれたのか、森にそう質問を返した。
「否？私個人が発した単純な興味だよ」
「……では、答えたくありません」
静かに強気な言葉を吐いた織田。
森は少し驚いたが、直ぐに織田を任務に向かわせた。
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作者名：myu | 作成日時：2021年7月28日 23時
