娘と父親 ページ31
「失礼します」
森がそう告げ、部屋の中に入り、太宰とAもその後に続いて中に入る。
「君達はそこで見ていてくれ」
森に指を指された場所に立つ2人。
不気味な程暗く、寝台以外の家具は見当たらない。
それなのに部屋はとても広い。
外の音も聞こえないほど静寂に包まれていたその部屋で寝ている男の姿がAの目に入った。
『…見ていてくれ…？何を…？』
先刻の森の発言に疑問を抱きながら、太宰の横に立つ。
チラリと太宰の顔を伺うと、その目は死んだ魚の様に色を帯びていなかった。
先刻の彼と本当に同一人物なのかと疑う程に。
「ご加減はいかがですか、首領」
森が声を発する。
「日暮れまでに第一組織も軍警も、ポートマフィアに逆らう者全員殺せ」
寝台に身を委ねる首領と呼ばれたその男は、掠れた声でそう口に出した。
「…それは非合理的です」
常に合理性を求める森ならではの発言だった。
「此方は何をしようと構わん、殺せ」
その男は精神が狂ったかのような顔つきをしていた。
「ただ殺せっ殺すのだ、殺せ、殺せ、殺せ」
「………判りました、首領」
Aは目を見開いた。
森が自分の背中の陰にメスを隠し持っていたのだ。
森が今から何をしようとしているのか分かったAは、顔を逸らし、目を瞑った。
ﾌﾞｼｭｯ
Aは少し離れた処に居たものの耐えきれなくてその場にしゃがみ込んだ。
『……ハァッ……ハァハァ……ｯ……』
軽く呼吸困難になりながら森の方を見た。
「首領は病により横死された
次期首領に私を任ずると遺言を遺されて」
森の顔には首領、否、先代首領の血が飛び散っていた。
Aは呼吸を整え、ふらつく身体で何とか立ち上がった。
「君達が証人だ、いいね？」
太宰の瞳の色は暗く、Aの顔は歪んでいた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「……済まなかったね」
あの後、森がAにそう云った。
『………いえ』
Aは森に精神安定剤を貰い、それを服用した。
お陰でAの様子は落ち着いた。
「…君にあれを見せる心算は無かったのだけれど、私の娘みたいな存在だからね
あの私がした選択を知っておいて欲しかったのだよ」
森は終始申し訳なさそうにそう告げた。
『…私も森さん……首領の事、父親だと思ってます』
Aはそう云って微笑んだ。
その言葉に森も笑った。
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mi(プロフ) - 遥か彼方さん» えぇありがとうございます！！！全然自信なくて…こういうコメント頂けると本当に励みになります！更新頑張って参りますので、宜しくお願い致しますm(_ _)m (2021年7月26日 22時) (
レス) id: 008ae2747a (このIDを非表示/違反報告)
遥か彼方(プロフ) - とても、面白いです！頑張ってください！しています！ (2021年7月26日 20時) (レス) id: 584d470f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：myu | 作成日時：2021年7月12日 23時
