おしえてせんせい

Q8.誤解してませんか？ ページ8

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先生と朝話さなくなって２週間が経とうとしている。教育実習生さんは相変わらずの人気っぷりで、クラスの男子やミーハーの女子に絡まれて嬉しそうだ。金澤先生の数学の授業には必ずひっついてくる。

「ざわくんさぁ、実習生のセンセのことすきになったりしないの？」

とある男子が、授業中に先生に質問すると、実習生さんは持っていたバインダーで自分の顔を隠した。それを 照れてる、とか ヒューヒュー とかって囃し立てるみんなを見ないように、わたしは寝たふりをしていた。

「あほ、お前の数学の成績１にすんぞ」
「え、てことは図星？」

さらに盛り上がるクラスから逃げたくて、わたしはトイレに行こうと立ち上がった。

「おい、Aどこいくんだ」
「トイレ」
「何も言わずに出ていかないように」
「はーい」

いくら、ふたりで花火を見たからって、肩を抱いてくれたからって、わたしたちは所詮先生と生徒でしかないことを思い知らされた。バインダーから赤い耳を覗かせる実習生さんをバレないように睨みつけて、トイレで何分時間を稼ごうか考えていた。



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Aがものすごく不機嫌そうな顔をして教室を出ていったけど、分かりやすい態度がなんだか愛おしかった。
とはいえ、Aと話さなくなってもう２週間くらいが経っている。朝の申し送りがさらに時間を要するようになったし、放課後は実習簿の振り返り。なんで若手の僕がこんなことしなくちゃならないのか甚だ疑問だが、教育実習なんて基本ボランティアだし、ちゃらんぽらんなうちの数学科の教師たちには任せておけなかった。
ただ、こうやって生徒たちにからかわれたままAのケアを怠っていては、これからの関係性が危うい。実習が終わってから言い訳したって遅い。どうにかして、Aとの時間を作りたいと思っていた。

「実習生さんに迷惑がかかるんだから、そういうことを言うのは控えるように」
「ひゅー、ざわくん大人〜〜」

生徒にざわくんとあだ名で呼ばれていては格好がつかないのだが、この現代、フレンドリーな教師を演じるエッセンスとしては不可欠だ。そして、そういう教師の方がなにかと有利である。

「それに、先生好きな人いるから」

そういって、トイレに篭っているAのことを考えていたら、周りの冷やかしが遠くに聞こえた。
２人で話して、この距離感を解きたい。いつ時間を作ろうか。


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