おしえてせんせい

Q21.何色がすきですか？ ページ21

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テスト返却日。金澤先生は、他の生徒には絶対みせないようなやさしい笑顔で答案用紙を差し出した。

「よく頑張りました」

わたしは点数が見えないように、端っこを三角に折り曲げる。にやけ顔を隠すように答案用紙で覆った。幸い、わたしの席はいちばん後ろだった。

「はい、解説するから席について」

先生はめがねをくいと直して、チョークを握る。黒板に綺麗な数列を刻んでいく。生徒たちがその数列を追っていく中、わたしはもう一度、折り曲げた答案をめくった。









"96 クリスマス空けといて"

わたしは先生の解説そっちのけで手帳を取り出し、12月25日に『先生とデート』と記した。お気に入りのシールも貼った。先生のご褒美とは、クリスマスデートのことだったのだ。

春は先生に恋をして、数学準備室に通った。
夏は浴衣を着て、先生のとなりで花火を見た。
秋は文化祭で、先生の気持ちを確認して、
冬は先生から、クリスマスデートのプレゼント。

そして、もう一度 春が来たらーーーーー。







「こら、A。授業中に関係ないもの出すな」

先生の声でハッと我にかえる。わたしは慌てて手帳を机にしまった。

「ーー今回、応用問題が多かったせいか平均点は低めでした。58点くらいかな。ちなみに最高点は96が一名、93が二名。平均点すれすれの奴は大学で困るからなー」

なんと、今回わたしがクラスで最高点だったらしい。まあ、わたしも頑張ったけど 放課後つきっきりで教えてくれた先生のお陰だよな。そうだ、何か先生にクリスマスプレゼントを渡そう！日常的に使ってくれそうなもので、先生が喜んでくれそうなもの…。

「進学組は大学からの課題も届くだろうし、テストが終わったからって気を抜かないように」

そうだ、ネクタイにしよう。先生はいつもグレーとか、ネイビーのチェックとか、ベタなものが多いから、いっそピンクなんかどうだろ。いや、変な色にしたら先生が付けてくれないよな…。てか、先生がもし学校でわたしのあげたネクタイなんかしてたら授業中にやけがとまらないよな…。ただでさえ先生の授業ではにやけがとまらないのに。
クリスマスはもう少し先だけど、帰りに早速駅前のスーツ屋さんみてみよう。

ていうか、先生とのクリスマス、どこ行くんだろ！


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