私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ10)

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恋するフリ始めました【10】ページ10

「ここの焼き鳥本当に美味いんだよ～」

「何頼もっかな～」そう向かい側でメニューを綺麗な指でパラパラめくる深澤さんとは対照的に私はひたすら周りをキョロキョロしてしまう。

「ここね、俺の知り合いの人がやってる店だから大丈夫だよ、味も最高だし。とりあえず仕事終わりだからお腹空いたでしょ。Aちゃんはなに食べる？」

ハイ、とメニューを差し出される。

『誰かに見られたら危ないっていうのももちろんありますけれど…』

「けれど？」

男の人と個室で2人っきりというのは初めてのため、なんだか気まずいんですよ…

と言えるはずもなく

『こういうお店初めてなので…』

「そうなんだ～あんまり外では食べないの？」

『そうですねえ…』

「そっか～たくさん美味しいお店あるからこれからたくさん行けたら良いねえ」

深澤さんには緊張しているという雰囲気が全くなく、本当に日常生活の会話をいつも通りしている感じって感じで。

これが場慣れしている人の余裕ってやつなのね…

その後店員さんをベルで呼んだあとは、これとこれと～と自分の好きなものを頼んだ後にAさんは？と欠かさず聞いてくれるあたり気遣いが上手なんだろうな～とぼんやり見ていると注文が取り終わって店員さんが去った後に

「勘違いだったら恥ずかしいけれどAさん俺のことさっきから見過ぎ！俺の顔に穴が開いちゃうよ～～」

どこか意地悪そうに頬をついて笑う深澤さんを見て

あ、この人モテるタイプの人だ。

そう思いながら『深澤さんの顔が綺麗だったから思わず見ちゃってましたね～』とこちらも負けじと返すと、少し目を見開いて、

「……あははAさんもそんな言うんだ～！」とまたいつものようにゆるく笑っているけれど、その耳は少し赤かった。

…あれ？ちょっと予想していた反応とは違って私も思わず戸惑う。

「飲み物とお食事お持ちしました～！」

ガラッと入ってきた店員さんのタイミングに心で称賛した。