私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ8)

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恋するフリ始めました【8】ページ8

インタビューが終わったのは陽が沈みかけている17時半頃。
街一帯がどこかオレンジを帯びていて、少し冷たい風が顔を撫でた。

今日も無事に終わった～～そう両手を上げて背伸びをしたが

『いや、全然無事に終わってないわ』

一瞬忘れかけたけれど、私にはどうにかしないといけない爆弾を抱えていたことを思い出し、上げていた両手を思わず頭に持っていく。頭を抱えるっていう言葉を作った人は凄いな。まさしく私は今頭を抱えている。物理的にも精神的にも。

ちょうどその時にマネージャーさんの車が停まり「ごめんね～道が混んでて～」と車の窓から顔を出す。

「…どうしたの。頭なんて抱えちゃって」

目を丸くしたマネージャーさんが「あなたがそんな道端でしてるのバレたら大変だからとりあえず車乗ってね」と後ろの自動ボタンを押して開けてくれた。

「どうしたの～今日仕事うまくいかなかった？」

ウンウンと唸っているのを見兼ねたマネージャーさんにそれとなく声をかけられる

『仕事は無事に終わったんですけれどねえ…』

「仕事は？」

『…………』

「まぁ、どうしようもなくなったら教えてね。たまには仕事以外のことも考えるのも大切なのかもね～♪Aちゃん、本当に仕事人間なとこあるし」

カーステから流れる流行りの音楽を口ずさみながら運転するマネージャーさんとは、私がこの世界に入ってからずっとお世話になっている。
右も左もわからなかった私に一から色んなことを教えてくれたし、何しろ上京という全く知らない環境で生活していかないといけない私の身の回りのこともフォローしてくれた。だからこそ今こうして私はこの世界で生きていくことができたと思っている。

そんな人に余計な心配をかけさせたくないな～…
ぼんやりそんなことを思いながら空を見上げると薄明が広がっていた。