私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ7)

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恋するフリ始めました【7】ページ7

「Aさん、おもしろいくらい目が開いてるよ～」

ゆるく喋るこの人から発せられた言葉をなかなか理解できていない。なんならもう写真を見せられた時点でどこかもう冷静に考えられてない部分あったと思うが、またそんな矢先に素っ頓狂なことを言われたらもう私はキャパオーバーだ。

「ちゃあんとこれには理由があるのよ」

そう言いながら、何やらポケットから紙を取り出して、固まったままの私の掌を開いててその紙を入れ込んでまた閉じた。

「でも、詳しく話すには時間がないかも。

近いうちにまた話そうね～」

向井さんの控室があるであろう方向に向かっていった。放心状態の私を残したまま。

「あ！Aさん！ふっかさんの用事終わったん？」

間もなく後ろから向井さんの声がしてハッとした。

『あ、話せました。さっき深澤さん控室に行ったみたいです』

「ほんなら良かった！いきなりふっかさんが用事って言うからびっくりしたんやけれど大丈夫やった？」

『大丈夫でした！私の落とし物を拾ってくれてたみたいで』

「そうなんや～！でもAさんのってわかってたんなら俺に渡しとってくれたらすぐ渡せたのにな～！」

『あっ……ちょうど向井さんとご飯食べるためにお迎えの口実だったのかもしれませんよ？！』

「なんなんふっかさんツンデレやな～～仕方ないわ～～」

は～全く素直やないな～とまんざらでもなさそうに向井さんが笑顔になったのを見て咄嗟に思いついたことだったけれど誤魔化せてよかった。

「じゃあAさん、また明日！」

パタパタとスタジオを後にした向井さんの背中をぼーっと見ていた。

思わずぎゅっと握っていた手を広げるとさっき深澤さんから渡された紙。開いてみるとIDと書かれた下に英数字が並んでいる。

連絡してってことですか………………

あんな爆弾をぶっ込まれて連絡しないわけにはいかないのだから、これはズルい人だな…と思った。

家に帰ってから連絡しよ…とりあえずこの場から離れて気持ちを切り替えなければ。