私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ36)

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「もう大丈夫だよ～」
少し間延びしたような声が聞こえたと思うと、目を閉じてても明るくなっていくのがわかった。
おそるおそる目を開けると出口を抜けていて「意外と最後のが大丈夫だったかも」そう呟きながら歩く深澤さんとは反対に、今まで目を強く瞑っていたからか、チカチカして上手く焦点が合わなくて何度も目を強く開けたり閉じたりしてしまい思わず足を止めてしまう。繋いでいた手が少し引っ張られたことで気づいた深澤さんが少し俯いてた私の顔を覗いた。

「大丈夫？」
『あ、大丈夫、です。もう少しで治ると思うので』
ちょっとマシになってきたかな。今私ひどい顔していないかな。
『あの私、お手洗いに行ってきても』
「ん、わかった～。エレベーターのとこで待っとくね」
さっきまで繋いでいた手をそっと離した。

『はぁ…』
まさかそんなハプニングがあるなんて思わなくて情けないところを見せてしまったなあと思いながら、鏡に映る見つめると半べその中々情けない顔の自分の顔があった。なるべく早く戻らないと深澤さんに心配かけちゃうな、そう思って顔にかからないように目だけ軽く洗った。

ん、あれ？
そういえばさっき深澤さんと手、繋いだな…？
ふと繋いでいた方の手を見た。
いや、もちろんその手がどうなっているはずもないけれど。何かこう…まあさっきのは非常事態だったし…深澤さんもきっと深い意味なんてないだろうし…。本当に何気ない感じだったしきっとこういうこと慣れているんだよね。そうそう。
でも、今になって繋いでいた手の方がむずむずするような気がした。

えっとエレベーターは…とトイレを出て見渡す。確か向こうに歩いて行っていたような気がするな、そう思った方向に進むと何やら話し声が聞こえてくる。
最初はわからなかった。あれ、プレオープンだったけれど結構人がいるのかな？なんて思いながら歩いていくと、その話し声は鮮明になって、そして、
最近までよく聞いていた声が聞こえてきた。そこで私は歩みを止めた、でももう遅かった。

「あ、Aちゃんやん！」

いつも明るいあの声と、

その隣にいるのは

「Aちゃんだ」

私が並ぶことができなかった隣にいとも簡単にいることができている、

私と仲良しの、あの子。