私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ30)

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『…あ～～！でも、これで良かったと思います。しかも、深澤さんに脅されることも無くなりますし』

少しの間流れていた沈黙を破るかのように少し大きな声を出した彼女は、立ち上がって座っている俺とは反対の方向に歩いていく。
波打ち際をギリギリで歩いていく。夜風に綺麗に整えられた髪と、ロングスカートの裾が靡いていて綺麗だ。

『…本当は、迷いました。言ってしまおうかって。

　でも、

　私の、気持ちを知ったら、きっと向井さん困るから。優しいから』

段々と言葉が途切れていくのがわかった。

それと微かに背中が震えている。

気づいたら追っかけて、抱きしめてた。

『えっ、ちょっと深澤さ「泣いたらいいじゃん」

びっくりしたように俺を見上げている大きな瞳に大粒の涙を溜めてて鼻はすでに赤くて。

胸を必死に押し返そうとするから、少し力を強めて抱きしめたら観念したように力を緩めたのがわかった。

『あの、これ…』

「今日だけはたくさん泣いちゃおうよ。俺以外だーれも見てないよ」

『…深澤さんが、見てます』

「あははいいのいいの。俺口堅いんだから誰にも言わないよ？」

『そうなんですか…』

「そうそう」

『……私、本当に』

空中を彷徨っていたAちゃんの手が俺の裾を強く握った。

「うん」

『本当に、向井さんのこと、好きだったんです』

…うん、知ってた。

だって、あれは本当に好きな人を見つめる目だったから。

まあそれに勝手に少し傷ついていたけれどさ。

『私の、初恋でした』

「…そっか」

最後の言葉を言ったら堰を切ったように涙が溢れ出して止まらないAちゃんの背中をひたすらさすった。

力加減ってこれくらいでいいのかな？あんまり早すぎ？というか俺冷え性だけれど冷たいの伝わってないよね？あー考えすぎてよくわかんない。

でもAちゃんの気持ちを利用して半ば強引に行動しちゃったけれど、こうやってずっと好きだった子を抱きしめられているという嬉しさと、啜り泣く音？声？さえも綺麗だなって思う俺はどうかしてる。

真っ暗の中に輝く星がやけに綺麗に見えた。