私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ25)

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気づいたらあっという間にクランクアップを迎えてしまった。

結局、深澤さんからの言葉が張り付いて離れず、それでも何もできなかった。

ううん、しなかった。

その後から深澤さんとは全くしないってことはないけれど、連絡のペースが減ったように感じる。

気まずいのか、それとも、別の何かがあるのか。

考えるとどんどん自分がダメになりそうだったので、忙しさで誤魔化して今日を迎えてしまった。

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それぞれ花束を片手に話していて『終わるんだなぁ』と思いながらそれを見ていると、

「Aちゃん、今日までありがとうございました！」

可愛くてでも通る声、振り返ると

『いちかちゃん』

「楽しかったね！終わっちゃうの寂しい…」

『本当にそうだね』

いちかちゃんは芸歴？で言うと私よりずっと先輩なのに、最初に敬語で挨拶をしてくれたいちかちゃん。
『敬語なんていいですし、むしろ私が敬語を使わなければいけないです』って言ったら「じゃあAさんは人生の先輩ですし、私は芸歴が先輩ってことですのでお互い敬語外して話しましょ！」と返ってきた撮影初日。

そこからいちかちゃんとは話すようになった。あまり自分から話しかけれない私にとって適度に話しかけてきてくれる存在だったからこの現場では有難い存在だったと思う。

元気で誰に対しても平等に接して、かつ自分を持ってる、話しているうちにそう思った。後はたくさん笑ってたくさん話す。それでいて誰も置いて行かないように周りを見ながら動いている。

だからこそ、向井さんの好きな人がいちかちゃんだとわかった時どこかで納得してしまった私がいた。そりゃ好きになるでしょ、なんて。

そんないちかちゃんが、いつにも増して目がうるうるしていて声も少しうわずっているように感じた。

何だか嫌な予感はした。

「実はAちゃんあのね…」

あ、待って。

その言葉の続きは聞きたくない気がする。

でもその唇から出てくる言葉を待つしかない自分もいる。

「向井さんと、付き合うことになったの」

全身が固まって動けなくなる感覚が襲った。