私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ14)

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帽子を被ってたし、ぶつかって終始俯き加減だったから顔よく見てなかったけれど。

茶色がかった綺麗なセミロングの髪が話したり笑ったりするたびに繊細に動いて、

綺麗な二重、睫毛なんて俺もよく長いねって言われるけれどそれが霞むんじゃないかぐらい長い。
これ、自家製？あの流行りのエクステとかつけてない？これでつけてないってなったら多分色んな人を敵に回すんじゃないの？

唇は少し小さいけれどぷっくりしていて形も綺麗で…

背も160cmあるんじゃないかな、すらっとしていて、こういう子がモデルとかなるんだろうなって俺でも思うくらい。上は白Tシャツだけだったのにそれが似合っていた、まぁそんな白Tシャツは俺がコーヒーで染めてしまったわけだけれど。

とにかく本当に原石、みたいな子だと思った。

『…あ、あの？』

「あ、ごめんごめん。ここはね、ここから真っ直ぐいったら△△っていうお店があるでしょ、そこを曲がって…」

不思議そうに目を丸くして見上げられたので焦って地図を見た。目的地は俺もよく知ってる場所だったからすぐ教えることができて『よかった～ここでぐるぐるするところでした』と安堵のため息をつく君を見て

あ、かわいい

そう思った、絶対口に出すわけにはいかないけれど。

「…それじゃ気をつけてね、オーディション頑張って」

『えっあっこの上着洗って返し「いーよあげる。コーヒーのお詫び』

『…すみませんありがとうございます！！』

ペコっと深くお辞儀をして俺が教えた方に真っ直ぐに走っていく。

…また会えるといーなぁ。

そんなどこか呑気に思っていた俺は1年後、

まさか自分の家のテレビでその子を見かけるとは思わなかった。