私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ2)

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恋するフリ始めました【2】ページ2

マネージャーさんに今から向かうというメッセージを小走りしながら打っていると、

『あっ、ごめんなさい！私よく見てなくて…』

「いえ、俺こそ避けきれずごめんなさい』

優しい声だと思った。

ぶつかって落とした携帯を拾って差し出してくれた指が、とても細くて綺麗だと思った。

ふと見上げると白い肌に長いまつ毛、シュッとした鼻筋。

あれ、この人どこかで見たことある？

「……あの、なんかついてたりします？」

『あ、ごめんなさい、違うんです、すみません。携帯、ありがとうございます』

ジッと見てしまっていた居た堪れなさと、時間もないことに気づき、慌てて差し出されていた携帯を手に取り、会釈してその場を去った。

落とし物をしたのにも気づかず──────

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『今日も終わった～』

あの後は無事に映画の撮影にも間に合い、少し押しはしたけれど無事に終わって家に着いた。

いつものように座る前にお風呂や洗濯、ご飯は今日は食べきれなかったロケ弁を持って帰ってきたのでそれで済ませていいや。

ひと段落済んだ後に、お気に入りの茶色のソファにダイブした。少し寒くなってきたこの頃にフカフカのソファは気持ちよくて思わず寝てしまいそうになるが念のため携帯を開いた。仕事中は何か用事がない限りに持ち歩かないし見ないので、ドラマの撮影が終わった後以来そう言えば見てなかった。

メッセージが数件、マネージャーさんからと公式LINEからいくつか。いつもと変わらない感じだ。

『えっ嘘』

メッセージ自体に驚いたわけじゃなかった。
手帳型のスマホケースに挟めていた写真が無いことに今気づいた。

思い当たるのはあのぶつかって携帯を落としたとき。

あそこだ。

もう今日は行くのはあれだし、明日の朝から行ってみようかな。

本来なら明後日撮影の時に確認すればいいが、そういうわけにはいかない。誰かの写真というわけでもないがあれは見つかった人次第では本当に危ないから。

そう思ったらさっきまでの眠気がどこかいってしまった。

次の日の朝、眠い目をこすりながら昨日スマホを落としたであろうところに行ったがどこにも見当たらなかった。念のためちょうど今撮影しているスタッフさんたちにも聞いてみたが、心当たりがなさそうだった。

それはそうだった。

「Aさんが探しているものってこれじゃない？」

もうすでに拾われていたからだ─────