51 ページ1
.
「Aちゃんも何か分かんないとこあったら聞いてね、多分2年のなら教えられるだろうし」
「それくらいのメリットがなきゃ俺らに付き合ってもらう理由ないもんな」
夏休みの課題を確認する私に、優しい声をかけてくれる目の前の先輩2人。隣のジョンハンも面倒くさそうに問題集に挟んであったペンを取ると、尖らした唇に当てる。
「ジョンハナ、ちゃんと教えてやれよ。お前数学得意だろ」
どこかにやにや含み笑いを浮かべるスンチョル先輩が、ジョンハンの手をペン先でつつく。ハイハイと軽くそれをあしらう指先が私の腕に触れて、思わずぎゅっとペンを持つ手に力が入った。
「あ、ごめん」
「あ、ううん、別に」
そういえばジョンハンとまともに話すのはあの屋上の時以来で、あれはあれでなんだかちょっと特殊な時間だったから、こういう前みたいな気軽な雰囲気は久しぶり。
そう改めて考えてしまうと、あれ私どんな風に前話してたっけ？距離近すぎ？もう少し離れて座ればよかったかも？なんて、目の前の文字が全く頭に入ってこない。
さっき擦れたジョンハンの指が、あの日私の腕を掴んだ彼の体温を思い出させる。少し掠れた声をもらしながら、私の肩に頭を預けた、あの時の爽やかなシャンプーの香りとか、そんなものにまで瞬く間に頭中が支配される。
「さっそく手止まってるけど、大丈夫？」
そんな記憶を再現するように、ふいに顔を覗き込んできたジョンハンの顔とあの時が重なって、思わずごくりと唾を飲んだ。
「…え、あ……あー…ぼーっとしてた…」
「まだ今開始1分だけど」
「…私ちょっと、一旦ドリンクバー取ってくる…って、あーっと、先に注文だよね」
「あ、じゃあ一緒にチキンも頼もうよ、腹減った〜」
「絶対食べるのメインになって勉強しないでしょ、却下」
お腹を擦るスンチョル先輩を横目に、ジョシュア先輩はドリンクバーだけ頼んで私を送り出してくれる。
ついでに俺のも取ってきてってグラスを渡してきたジョンハンは何でもない様子で、意識しているのは私ばかりみたいだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 940人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：。 | 作成日時：2023年1月24日 23時
