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目の前には口の周りにパンくずをつけながらもしゃもしゃとぶどうパンを頬張る冨岡さん。そして、その隣にはうまい!うまい!とさつまいもがのったパンにかぶりつく大きな目をした男の人。私の隣では芸能人顔負けの容姿である宇髄さんが優雅に缶コーヒーを啜っている。
・・・どうしてこうなった。
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美容院でヘアカラーをしている間の暇つぶしに何となく手に取った雑誌。そこには『絶対ハマる!美味しい楽しいパン屋巡り』という特集が組まれていた。
職場の近くにあり同僚と買いに行ったことのある店も掲載されている。シンプルな塩パンが美味しくて週に3回くらい通いたいと思った所だ。お財布とカロリーの都合でその願望はかなわないのが悲しい。
他にも行ったことのある場所から隠れ家のような所までたくさんの店が載っているなかで、一際目を惹かれたのは・・・
「竈門ベーカリー・・・」
「そこ美味しいですよ!よく行くんですー!ここから二駅くらいだったかな」
ちょうど染まり具合を確認に来てくれた担当の方が私の髪を触りながら竈門ベーカリーについて話してくれた。なんでも、パンの味はもちろん最高で、店員さんがとてもいい子で可愛くて、ついつい買いすぎてしまうらしい。
「へぇ、行ってみようかなぁ」
「ぜひぜひ!髪、いい感じに染まってるのでそろそろ流しますね」
髪を洗ってもらいながら、この後の予定もないしせっかく外に出てきたのだから美味しいパンを買いに行こうと、美容院から出た後の計画をたてる。パン屋の扉を開けた時の香りを想像しただけでお腹が鳴ってしまいそうだ。
乾いた髪を軽くセットしてもらい美容院を後にする。特に何かあったわけでもないが、何となくイメチェンしたくて胸の下あたりまであった髪はばっさり鎖骨上。ショーウィンドウに映った自分の髪型が見慣れなくて少し変な感じがした。
電車に揺られて二駅、スマホのナビを頼りに辿り着いた竈門ベーカリーのパンはどれも美味しそうで何を買うか悩んでしまう。思わずフランスパンを手に取ってしまったのは、レジでニコニコと微笑むフランスパンを咥えた(なんでなのかは突っ込んではいけない気がする)可愛らしい少女が視界に入るからだろう。
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作者名:おちゃっぱ | 作成日時:2020年1月22日 21時