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本日は土曜日。仕事も休みだし、でかける予定も入っていない。平日録り溜めたドラマを消化するためテレビをつけようとしたところで部屋の外から何やら話し声が聞こえてきた。

新聞や宗教の勧誘か、それともアパートの住人同士お喋りでもしているのか・・・

どちらにしても話声が聞こえるのは気になるので、せめてもう少し防音に優れた部屋を借りるべきだったかとため息をついた。



「さっさとチャイムを押しやがれ!派手にな!」

リモコンの電源ボタンにかけた指が思わずとまる。

・・・チャイムって派手に押すものなのか?と聞こえてきた声に心の中でついツッコミを入れてしまった。


この階は私を挟むように左が冨岡さんで右が空室とはいえこの声量は近所迷惑だ。昨夜酔っ払っていた冨岡さんは二日酔いだろうからその大声は可哀想・・・という心配は意味をなさなかった。


「冨岡ぁ!お前チャイムも押せねぇとかどうなってんだこうやって派手に押すんだよ」


ピンポン、と派手とは程遠い地味な音が私の部屋に響く。

この大声は昨日冨岡さんを運んできたフードの男の人だ。はーいと気の抜けたような返事をして玄関に向かいドアを開けた。


「昨日は騒がしくして悪かった。こいつも復活したから謝りにきたんだ」


派手派手な外見や声とは裏腹に、きちんとした人らしい。お前も謝れ、と隣に立つ冨岡さんを肘でつついている。


「・・・俺は悪くない」


ぼぉっとしているが顔色は悪くなさそうなので、二日酔いは大丈夫そうだ。


「元はと言えばお前が酔いつぶれたからだろうが!」

「覚えていない。部屋を間違えたのは宇髄だろう」

「はぁ!?」


宇髄と呼ばれたフードの男の人はその整いに整った顔をこちらに向けもう一度「悪かった」と謝った。


「大丈夫ですよ。むしろわざわざ謝りに来ていただいてこちらこそすみません」


「これ、お詫びに」


ほら渡せ、とまたしても肘でつつかれた冨岡さんが差し出したのは駅前のケーキ店の箱。お高めなので自分では滅多に買いに行くことはないが驚くほど美味しくてお気に入りの店だ。


「口に合うか分からねぇが受け取ってくれ」


「ありがとうございます。この店大好きです」


「そりゃあ良かった。これからも冨岡が迷惑かけるだろうがよろしくな」


去っていく二人を見送り扉を閉める。


部屋を教えただけなのにケーキを貰えるとは。いいことはするもんだ、とほくほくしながら紅茶を淹れ、美味しいケーキを味わった。

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作者名:おちゃっぱ | 作成日時:2020年1月22日 21時

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