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(side giyu)


目を覚ましたらきちんと自分の部屋のベッドの上だった・・・・・・となれば良かったのだが、俺は床の上で通勤用のリュックを抱きしめていた。服は昨日のままの青ジャージ。頭と体が痛い。

しかし俺はここまでどうやって帰ってきた。覚えている最後の記憶は同僚に質問攻めにされた辺りまでだ。


「おー、冨岡やっと起きたのか」

痛む頭と体に鞭を打ち起き上がると、部屋の隅に置かれたベッドから声がかかる。

俺のベッドの上で長い脚を組んでスマホをいじっていた宇髄は「ベッド借りたぞ、マットレス硬すぎ」とさらりと文句まで付け足した。家主を床に寝せておいて勝手に使い、さらには文句とはどういうことなんだ、と恨みがましい目を向ける。

「そんな目で見んなよ。言っとくけどなぁ、ベッド行けって言ってんのにてめぇが勝手に床で寝たんだからな。毛布かけてやっただけありがたいと思えよ」

「勝手に飲んで勝手に潰れやがって・・・運ぶ方の身にもなれ」という言葉を聞き流しながら見れば確かに足元に掛け布団が丸まっていた。どうやらだいぶ世話になったらしい。


「すまない、ありがとう」

「今度の飲みはお前持ち。それでチャラにしてやるよ」

そう言いながらベッドから降りてきた宇髄は俺の前にしゃがみ、にやにやと笑う。

「・・・で、冨岡が好きなヤツは隣の部屋のねーちゃんで正解か?」

「・・・好きじゃない」

「昨日酔って隣の部屋の子が好きだって言ってたぜ、ちなみに煉獄と不死川もバッチリ聞いてる」

「・・・」

「なんか言えよ」

「好きじゃない」

「はぁ?だから、俺たちはお前の口から聞いたんだぞ!?」

「ろくに話したことも会ったこともない俺に好きだと思われても困るだろ」

「あっそう、じゃあ話しに行こう。俺が派手に取り持ってやるよ。昨日俺も酔ってて部屋間違えてな、それの詫びをしに行くぞ」


そこからは宇髄に連れられるがまま駅前のケーキを買い、隣の部屋を訪ねることになってしまった。隣の部屋からかすかに聞こえていた声を間近で聞いたことで頭が真っ白になり結局まともに顔も見られなければ話すこともままならず、宇髄に怒られたのは言うまでもない。「次にあの子に会ったときは絶対に謝れ」と、話す言葉を一緒に考えて練習してくれたことは少しありがたかった。


月曜日、ゴミ捨て場の前で会ったAさんに宇髄と練習した言葉を伝えられた俺は内心ガッツポーズをしながら彼女の横を歩くのだった。

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作者名:おちゃっぱ | 作成日時:2020年1月22日 21時

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