ワタリドリ (ページ1)

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ある冬の日のことページ1

「私の世界は狭かった」

そう感じるのは何故だろうか。

白く柔らかな雪の中に包まれて、深い思考の渦に落ちていく。

今まで私は誰よりも広い世界を旅して、その光景を目に焼き付けて来たというのに。

私の心は、何も知らないあの頃と同じまま、満ち足りない不快感が渦巻いている。何故だろう。

だんだんと頭が霞むように白く埋め尽くされていく。

ああ、違うんだ。その理由は自分が一番理解している。
　
結局私は何もできず、今はもうただ終わりを待つだけしかできない。

最後に一度だけ、夢を見たいと思った。

そう、例えば、「君と共に世界を周る夢」だとか…

初めに目に飛び込んできたのは青色。

澄んだ青色のグラデーションに、柔らかそうに白く丸まった雲が点々と浮かび、眩しいほどに爛々と光る太陽がそこにあった。

ゆっくりと体を起こしてあたりを見渡せば、青々と茂る背の低い草木が地平線の向こうまで広がっている。

雨が上がったばかりなのか水滴の伝う草花は、明るい日差しに照らされて、風に揺られながら輝いている。

美しい景色だと思った。

「さて」

私は何をすればいいのだろう。

私は確かに“ あの日” に死んだはずなのに、何故ここにいるのだろう。

南のほうに古めかしい城が見えた。
森のなかに埋もれて誰からも忘れ去られたような城。

何となく、そこに行けば“ 失くしたもの”を見つけられる気がして。

突然現れた(・・・・・)、幻かも分からないそこへ向かって歩き出した。