short story

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『岩本さんはなんでこんなことするんですか。』






買い物スポットへ向かう車中





痺れを切らしたように話しかける君





「んーあの男の沼にハマってて
抜け出してくれない君に限界きたから
ちょっとだけ実力行使してみた。」





『ちょっとじゃないでしょ、こんなん。
ただの誘拐じゃん。」






イライラするとタメ語になるんだね。
また新しい一面を発見した。




「別に家に引き込もれって言ってるんじゃない。
Aちゃんの好きなものを与えて自由に
生かしてあげる。あの居酒屋で働いていいし
大学も通っていいよ。卒業後は好きなことをしたらいい。ただ帰る家が俺たちの家だってだけ。」






『頭おかしいんじゃない？』





「一度も逃げようとしないし、大きな声を出して
助けを求めようとしないAちゃんもどうかと思うよ？」




『それは！』




「ナイフだの銃だの持ってるわけでもないし
縄で縛って担いでるわけでもない。」




心の奥底で新しい環境に身を置きたいって
思ってたんじゃないの？






『両親が心配する。』





「両親は亡くなったでしょ？」




『…なんで！』




「ん？店長さんが教えてくれた。」




『まじただのストーカーじゃん。』




…あながち間違いじゃないなぁ…





『それに学費！あいつが払ってくれてたのに。』




「学費まで払わせてたの？罪な女だね。
そんくらい俺が払うよ。」




どう？こんな幸せな環境にタダで身を置けるんだよ。





反抗するネタが無くなったのか
移り変わる景色をただただ見つめ続ける君。





「そろそろ着くから。」






声をかければこちらを睨み




脱いでいたスニーカーを履き直す。




『何買うの？』




「ん？新しいお洋服。」





車を降り君の腰に手を回してお店に向かう。




『アイドルなのにいいの？』




「ん？貸し切って貰ったから。平気。」




『うわぁ』





「あはっ何その反応。可愛くしろよ。」

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