主人公になろうとしなかった主人公たち ページ24
その記憶は暴風から始まり、暴風が消えればいつもの光景だった。
俺たち三人のうち、誰かがお前の手を握っていた。お前は俺たちに怯えていたけど、泣いてたけど、俺たちはそれに構わず海に出た。死の海域を越え、海軍に保護してもらって......俺たちは普通の幸せを送るんだ。
あのイカれた島とおさらば。そんな都合のいいハッピーエンドばかりを夢見る。あのイーサンでさえもそれを望んでたのは驚いたよ。
でも、でも。お前はそうすることを選ばず、俺たちを殺すことを選んだ。その殺しは救いだったけど、幼い俺たちが理解できるわけもなく。
イーサンはそれを理解してもなお、怨念を背負い、
快楽のために人を殺している。
............羨ましいよ。どうしてお前だけ、そんな自由に生きていられるのか。どうしてお前だけ、彼女を独り占めしているのか。
羨ましい。
オーディン｢まだ...来ないだろ。武器を揃えてる間なら、好きにできる。｣
｢......｣
意識はないけど、常に毒の痛みで小さな悲鳴を上げてる。
体は仰け反り、口から触手に毒を注入され続け、身体中にも小さな穴ができている。できては再生し、再生しては......その繰り返し。正直くるものがある。このまま■して、俺だけのものにできないかと欲が出てきてしまう。
オーディン｢違う！！！俺は......お前を助けに来たんだ。一緒に逃げよう、A。このままだとお前、自分が愛している人さえも殺してしまうぞ。｣
｢......？｣
オーディン｢今それを殺す。海岸から生えてるってことは......核の場所も見当がつきやすい。魔力の痕跡を辿れば、怪物の心臓は見つけやすいものだ。Aは女の子らしく泣いてればそれでいいよ。戦われるぐらいなら、そっちの方がマシだ。｣
俺はまた夢を見る。今度は暴風じゃなく......ああ、これは現実か。あるいはそうであってほしいという妄想か。
オーディン｢いい加減、俺の嫁から離れろ。｣
今みたいにのんきに寝てほしい。俺が帰ってきたら飛び起きて、女の子らしく笑って出迎えてほしい。女王とか海賊とか海軍とか、そんなのどうでもいいから。
オーディン｢(俺のものになってほしくて、先駆けて誰かの功績を盗んだ。)｣
｢オーディン...ありがとう。ねえ｣
オーディン｢体なんぞいるかよ。俺みたいな汚いヤツに、お前の綺麗な体はもったいねぇや。｣
｢......アステリオス？｣
俺の嫁にならなくていいから。
アステリオス｢(普通に暮らしてくれねぇかな。)｣
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作者名：琲世 | 作成日時：2022年9月28日 12時
