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「じゃあ樹ちゃん、寂しいだろうけど俺帰るね」
「むしろ、ありがとうな」
2人で今後についての話をし、丁度良い時間になった頃。ホットドッグが好きそうな笑い方をし、ジェシーが爽やかに帰っていく。まあ、ホットドッグ食べてるところは見たことないけれど。
「‥水、無い」
彼との会話のせいで干からびた喉を潤そうと、冷蔵庫を開ける。しかし中は空っぽだ。溜め息をつく。犯人はすぐに分かった。
「‥アイツだな」
途中から水飲んでんなとは思ったけど、まさか
財布の中があるのを確認し、カラカラになる前に急ぎ足で購買へと向かう。確かここは4階だ、購買は1階だったよな？エレベーターに乗り込み、表示を見て1人頷く。良かった、合ってた。病院で成人男性が迷子なんて恥ずかしい構図にならなかった事に安堵し、ふと鏡に目をやる。
真っ黒な瞳と目が合った。明るく光る髪、しかしそれは見た目だけで触れば眉根をひそめたくなるような感触。耳にぶら下げられた複数のピアス、ジャラジャラとうるさいアクセサリー、派手な洋服。そして、無数の傷や痣に当てられた包帯たち。
「‥‥‥」
ピンポン。エレベーターが3階で止まった。こんなはずじゃなかったのに、と目をそらす。ドアが開くと、いかにも病人というような、点滴を引いている男性が入ってきた。顔色が悪く、足取りが覚束ない。そんなにも体調が悪そうなのに、一体何処へ行くつもりなのだろうか。不思議に思いながら、ボタンに手をかける。
「‥お兄さんは？」
「あ、2階で。‥すみません」
沈んだ声が聞こえた。視線を感じながら、「2」を押す。2階って言ったって産婦人科だけどな、そんな入院着着て何すんだろ。誰かの見舞いとか？
ガクン、とエレベーターが動き出す。その時だった。ドサリと背後で音がする。え、と声を漏らしながら振り向くと、その男性が荒い息をしながら横たわっていた。‥倒れた？
「‥え、ちょ‥お兄さん？」
グッタリとしている彼に声をかける。人を殺す仕事をしているけど、誰かが不意打ちに倒れるのは訳が違う。焦りながら声をかける。
「揺らしちゃ、駄目、だよな‥えっ、と‥お兄さん？‥お兄さん？」
額に手を当て、そこでふと気づく。彼、次のターゲットだ。
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作者名：輝月姫 | 作成日時：2023年8月22日 16時
