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「‥ねぇ、馬鹿なの？」
「うるせぇ」
その結果が、まあ見事にこれだ。
昨日の夜、警察官に追いかけられた俺。行き止まりに逃げ込んだが、そこから飛び降りた事で逃れることが出来た。下が芝生だったため無傷で居られると思ったものの、案外高かったらしい、全身強打で動けなくなったのだ。不幸中の幸い、意識はあったので、俺が携帯でジェシーにヘルプし、結局緊急搬送された。
頭部の裂傷、肋骨の骨折、右腕ヒビ、右大腿部の酷い打ち身。因みに裂傷は6針、肋骨は1本が骨折で2本はヒビだった。‥まあ、別に痛くねぇし。
「大体警察に目つけられるなんて、樹も馬鹿だよね、馬鹿ばかばぁか、カバ！なんって！」
「‥それ以上言ったら、殺るぞ？」
「HAHAHA！！樹くんこわーい！！」
‥頼む、誰かこの色白ハーフをどうにかしてくれ。頭を抱えるも、傷口にダイレクトに触ってしまい、思わず悶える。それを見てはジェシーが笑う、この悪循環。‥本当、個室で良かったよ。
「‥てかターゲットは無事殺れたんだし、別に良いだろ」
「ん〜、まあね〜」
何処と無く上の空で返事をしたジェシー。かと思えば、少しの間を置き、今度は真面目な表情で語りかけてくる。
「‥でもね樹、言っとくけど、一度警察に目をつけられたら、あとは時間の問題だよ」
「‥ああ、分かってるよ。‥だから今晩、この病院から抜け出すつもり」
幸い足は無事だしさ。そう言うと、「それが1番だと思うよ」と言いながら、椅子でクルクルと回る。そしてまた「AHAHA！！」と騒ぎだしたかと思えば、今度は何やらバッグから引きずり出してきた資料たちを眺め始めた。一緒に仕事をし始めて早5年、未だにコイツの情緒は分からない。
「どれだぁ？‥ん〜、あ！あった、これだこれ！」
ポイッと投げ渡されたバインダー。コイツは俺にもっと怪我をさせるつもりだろうか。半分呆れ、半分は殺意を感じながら、その資料に目を通す。
「これ、次のターゲット？」
「ん、そうそう」
名前、顔写真、特徴、来歴、依頼者の動機‥。全てが書き込まれたそれを読む。来歴のところはスカスカで、これまた珍しいのが、依頼者が彼らの両親であることだった。
親に恵まれなかったのか、はたまた親が恵まれなかったのか‥そんなことを思いながら、顔写真に目を移す。思わず息を飲んだ。
「‥松村、北斗‥‥」
これ以上にない程の、整った顔立ちをしていた。
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作者名：輝月姫 | 作成日時：2023年8月22日 16時
